おいしいごはん

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おいしいごはん

「そうめんなんてどうですか?」と中山(スタッフ)さんが提案した。僕が晩飯どうしようかな?と僕の独り言に応える感じで。

「そうめん?それもアリだな。涼しそうだ。」

「でしょ。私、熱を出した時あったじゃないですか。」中山さんは、先週の水曜日から風邪をひいたのか、喉の痛みがあり微熱が出ていた。僕はもう休みなと言ったのだが、大丈夫ですと出勤してきたのだ。土曜日には完全復活して、病み上がりだから早退していいよと体調に配慮したのだが、「帰りません。もう大丈夫です。」と気合満々で働いていた。

「体調悪かった時に、そうめん作ったんですよ。そうめんに、大葉いれて、もずくを入れて、梅を入れるんです。旦那さんそうめん嫌いなので怒ってましたけど、めちゃ美味しかったですよ。」

「それ旨そうだな。ていうか旦那さんそうめん嫌いなの?」

ケチャップライスも嫌い、そうめんも嫌いとは、僕に性格が似ているというが、食の好みは全く似ていないんだな。バイクはハーレーに乗って、山登りが好きで、初めて買ったCDはマイケルジャクソンで、モノ作りが好きでランプを手作りしていて、車の整備工場を友達としているという。中山さんにいろいろ聞かされていたので、会ったことは1度しかなかったが、もう顔も忘れてしまったが、しらずしらず親近感が沸いていた。

「そうなんですよ。そうめん作ったら、お前、俺と何年付き合ってんの?そうめん嫌いなの知ってるよな。って言われて、体調が悪いから許してよ。って言ったら、しぶしぶ食べてくれたんですけど、感想はやっぱり不味かったらしくて、すっぱ!って言ってました。」とアニーのようなもじゃもじゃ頭を揺らせて笑っていた。

もじゃもじゃ頭の刈り上げカットをしていた中山さんだったが、中山さんが通う鍼灸院の先生が、「アナタノ、ソノ頭、パンチマーマデスカ」と言われたらしい。中山さんは「ちがいます。」と言ったらしいが、「短クシタラ、パンチパーマデショ」と言われて、面倒臭くなって「そうです。パンチパーマです。」と答えたらしい。中国人の先生がいる鍼灸院に行くと、なんでも体調が万全に整うそうだ。

「主任も、そこに行って来たらどうですか?めっちゃ効きますよ。」

僕は他人に身体を触られるのが苦手だったし、体を触られても落ち着く人は、唯一ひとりだけ居たけど、もう僕の隣にはいない。だからその提案はありがたいけど、無いなと思った。

そして、今夜の晩御飯はそうめんに決まった。あご出汁と、めんつゆを合わせてこだわった。料理は、ひとつだけこだわる。それが美味しく料理を楽しむコツだ。大葉の香り、もずく、梅に、そして鶏のささみを入れた。

「パパちゃん。ちょっと手伝って。はい、これ手でちぎって」

なにかと思えば妻は鶏のささみを差し出して、手で繊維にそって細かくちぎれとボールに入った鶏のささみを差し出した。

「これ手でちぎるの?」

「そうだよ。暇でしょ。ほら、美味しい晩御飯が食べたきゃ手伝って。働かざる者食うべからずだよ。」

ピンクのジャージを履いて、部屋着になって台所に向かって妻が料理している。耳にはイヤホンがしていて、なにかの音楽を聴きながら。

「マジで、これめっちゃ面倒だな。これ包丁でやったらダメなの?」

「ダメ。包丁で切ってもキレイにならないのよ。手でやるほうがよっぽど美味しいの。さぁ、やったやった。」

鶏のささみを繊維にそって、そいでいく感じで剥くと結構大きめになる。舌打ちしたくなるのを我慢して、大きく剥いてしまったものを、さらに細かく削ぐと、爪にささみが入り込む。身体に異物が入ってきた感覚が広がる。

当時は、習慣的に料理をつくっていなかったから、僕が料理を作る時は必ず大層な事になった。チャンチャンという中華料理屋があった。決まってお店は妻が見つけてくる。誰かから情報を仕入れてきては、僕は妻の後をついていった。チャンチャンの中華粥が最高だったので、妻が風邪をひいて寝込んだ時に、あの味を真似て作った事があった。鶏ガラスープを入れて作ったが、あれは上手に出来たほうだ。ひどい時はスパゲッティーを作ろうとしてフライパンで炒めた事があった。あれはマジで不味かった。

「かわいそう。風邪ひいているときに、マズイものを食べさせられるなんて。」と当時働いていたスタッフに言われたそうだが、妻は「私は、そうは思わないよ。作ってくれてありがとうね。」と妻は言った。妻の言葉には愛情がこもっていて、その言葉を聞いて少しだけ温かい呼吸になったのを覚えている。

妻は、体で覚えろ!っていう教育方針だったが、妻がいなくなって料理を作る事が習慣になった。今日の晩御飯は何にしようか?と考える事が日課になった。文字通り身体で覚えざる得ない状況になって、今日はそうめんを作って食べる。

息子に「今日は仕事かな?」とLINEをおくると、23:00に既読になり「今、終わった。」と返信が来た。仕事ちゃんと頑張ってる。「晩飯そうめん作ったけど食うか?」と送信すると、「たべふ」と返信が来た。

自分の作った料理を、食べてくれる人がいる。「そうか、そういうことか」とかぼちゃの煮付けを思い出した。

「これ、作ったの。」とまだ付き合っている時に、タッパーの蓋を開けて僕に見せた。そして彼女は僕を見て「かぼちゃ、好き?」とはにかんだ。つるっとハリのあるほんのり赤いほっぺたがキレイだった。かぼちゃの煮つけを口に入れて、特にお腹は空いていなかったのだけど、こうしてタッパーに入れてもってきてくれる時、彼女はどういう気持ちで用事したんだろうか?と想像して味わった。「美味しいよ。ホントに美味しい。」と僕は彼女の想いに応えたいと思って、多少大げさに言った。

そういう事なんだな。ごはんを作るって。

息子につくったそうめんは、エビは抜いておいた。

きのう何食べた?~ソロピアノver~

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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