ゾンビ

今日は息子は休みなんだろうか?全く予定が見えなかった。家を空けることが多くなったり、帰ってくる時間が遅くなったりするのは、忙しくしている証拠なんだろうと、僕にとっては安心の材料だった。

僕は息子に「今日は仕事なのか?休みだったら食事一緒にどうだ?」とLINEを送信した。

祭りと距離を置く結論を出したのは、心理的に大きな決断だった。やっと自分の選択で歩く事が出来たのかもしれない。妻に依存していた頃には、出来なかった決断だ。

「彼はね、お母さんに依存して生きて来たんだよ。だからね、君はその後を継いだのかもしれないね。損な役回りだけど。」と直クリニックの直先生が、妻に言ったのだそうだ。

この時、僕は鼻腔炎になり点滴をしていた。妻と直先生が話しているので、僕はてっきり悪い病気にかかっているのだと思い込んでいたのだが、そんな事を話をしていたらしい。

鼻腔炎になった原因は単純だ。インフルエンザが大流行したときに、台所のあらゆるところを塩素消毒していて、蒸気と共に塩素を吸い込み、その後に高熱が出て、妻に車で直クリニックまで送迎してもらったら、鼻腔炎という診察結果だった。

点滴が終わり、帰りの車の中で、「私は貧乏くじを引いたらしいよ。」と妻が言った。

妻の運転する車の助手席で、座席を倒して乗っていた僕から、赤いテールランプが車内に影をつくっていた。上には高速道路が走っていて、大きな構造物を下から見ると、鉄骨が縦横に組まれていて、排気ガスを受けて黒く汚れているのが見えた。少し気が楽になって隣に妻の気配を感じていた。

「しっかりしてよね。私はあなたのお母さんじゃないのよ。」

妻の横顔がテールランプに染まり赤く染まって髪がキレイだった。

妻に甘えてばかりの僕を思い出していた。

あの頃からは、多少マシになっただろうが、僕は僕で立てているだろうか。そんな自問をするが、なかなか返答が帰ってこないまま、息子からの返答がLINEに通知される。

「おまじ」
「いくか」

時間を見ればもうすぐ19時になろうとしていたので、八阪町の昌久園に連絡を入れると、席は空いてますので、今から来てくれればという返答だった。


目次

組織づくり

「現場がえらい事なってるんだよね。」

塩タンと、ロースと、カルビと、生ビールと、オレンジジュースで、あとごはんをふたつ。と注文をし終わる前に話し出すものだから、意識がちゃんと息子のほうを向いていなかった。

「なんだって?」

「だから、仕事出来る人だけで現場を回していているから、不満が溜まりまくってるの。」

「なるほど。マンパワー頼みってことか。」と言うと息子は頷いた。

「こんにちは」と見慣れた女性が挨拶してくれた。そして「今日は息子さんとお食事ですか。」とニコリとして、目の前の鉄板にチャッカマンで火を付けてから「ごゆっくりしてくださいね。」と小さくお辞儀をして、厨房のほうへ消えてゆく。

「だれ?」と息子が言うので、「だんじり祭りの仲間の嫁さんだよ。ここで働いているんだ。」と息子に言って先ほどの会話へ戻った。

「つまり時給が同じなのに、仕事のできる人の負担だけが大きいというわけだな。」

「そうそう」っと息子は大きく頷く。感覚的に物事を構造化して眺めている息子には、いつも言葉が後から追いついてくる。だから僕が要点を言葉にすると、息子の胸の中へストンと音を立てて落ちてゆくようだ。

「それはマズい状況だな。パパの昔の職場を思い出すよ。」と言って、マンパワーに頼りすぎると規則規律がぐちゃぐちゃになるとか、新しい人が育たないとか、いちスタッフがルールになったりするから、周りが振り回されるとか、僕の苦い経験を息子に話しをした。

塩タンが運ばれてきた。僕好みの薄い塩タンだったので、少し安心したが、ちょっと小さいような気もする。これ焼いたら縮むから、めっちゃ小さくなる。これで2000円は高いな・・・と正直思った。

「自分のものは自分で焼いていこうぜ。マイペースで食べたいからさ。」

以前のちゃんこ鍋で山盛り入れていたのを思い出して、出された肉を一気に焼きそうだったので、さりげなく息子に伝え、息子の分のトングを手渡した。

「店長は、現場がまわっていたらいいじゃんって考えの人だから、現場がマズイ事になっている事がわからないんだよね。それがなんか危ういというか。」

「なるほど。しかし、お前はすごいな。ちゃんと何がマズイのか問題意識を持って働いているんだから。」

タンを置くとジューと一瞬だけ煙が出て、勢いよく焼けていった。少し目を離すと焦げてしまいそうな勢いだった。すぐにひっくり返して多少赤身が残っていたが、レモンにつけて口にほり込んだ。

「うまいな。めっちゃうまいわ。」

口の中に広がる肉汁がたまらなかった。久しぶりの生ビールをひと口、ふた口と喉を潤していく。至福の時間だった。

「僕が教育係になって、教えているんだよ。普通は正社員じゃない?あり得ないよマジで。それに若い新入社員の正社員がいるんだけど、その人は辞めるらしいよ。良い人から辞めていく状況だから、ここに未来はないとか言ってた。」

タンを焼けるのを眺めて、息子の話を聞いている。網の下に赤い炎が燃えている。その炎から目を離し、息子を見て僕は言った。

「そいつは、点で見てるな。今がダメだからといって、この先ずっと悪いわけじゃないと思うよ。理由のひとつは、新店舗がスタートして2か月目だ。立ち上げの時は、どうしてもルールや教育がままならないので、マンパワーが必要になる。特にお前みたいな売り上げに直結して、客の動きを理解して、心をつかむようなスタッフが店を動かしていく。立ち上げの時に理想論を語ったところで、誰が店を動かしていくだって話だよ。」

息子は焼けたタンを取り出して、レモン汁に浸して口へ運ぶと、「タンめっちゃうまいな」とご満悦だ。息子は脂身が苦手だったので、ここの焼肉屋はどうかなと思ってはいたのだけど、大丈夫そうで良かったと思った。

「スタートダッシュが決まれば、次は安定した運営を目指すようになる。その時に、平均的なスタッフを揃えてマニュアル重視の運営になってゆくんだ。安定期になると、マンパワーは確かに助かるんだけど、突出したエースみたいな人材よりも、みんなで頑張ろうっていうチームを目指すほうが、みんなが楽しく働けるんだよ。たぶん彼が言うチームはここだろうな。」

あっという間にタンが無くなると、ロースが運ばれ、カルビが運ばれてきた。僕は空になりそうなジョッキを指さして、「生ビールおかわりお願いします。」と言った。

昔、妻に注意されたことがあった。空のジョッキを指さして「これひとつ」と言うと、「ちがうでしょ。生ビールおかわり下さい、でしょ。なんて横柄な態度なの?」と言った。こういった細かいマナーを妻は大切にしていた。だから今も妻の言葉を思い出しては、ちゃんと注文する。


飢えた息子

ロースもカルビも赤身に交じり白い繊維が入っていた。これは息子は食べれるんだろうか?なんてことを考えながら、トングでロースを1枚とって鉄板に乗せた。

「店長なんもしてないような気がするんだ。新人教育は僕がしてるしね。」

「店長だって、今まで結果を出してきたから、店長に昇進したんだろう?なんにもしてない事は無いと思うけど。それにパパだって現場では、なんにもしてないぞ。」

と言うと、息子は間髪入れず言葉を投げてきた。

「パパはずっと現場にいるだろ。」

「そりゃ現場にはいるな。休憩さえしてないし、一番働いているな。だから中山(仮名)さんとかが、今スタッフ足りてるから休んできてくださいとか言ってくれるかな。」

息子は、目を丸くして「そうなの!?」と少し驚いた様子で言った。部下に心配されるのが、よっぽど予想外だったらしい。

そして、なにか腑に落ちたのか鉄板のロースに目を移して、トングでひっくり返し、軽く煙が上がった。

「中山さんって人、良い人だね。」

息子はそう言ったが、ホントそうだと思う。小さい体で、気がついた事をちょこちょこと動き回る。そして、動きの悪いスタッフにはちゃんと叱れる。そして報告が細かい。長い。そして僕たちの息子を大切にしてくれる。

「現場にいる事が大切なんだと思う。副店長とか承認欲求が強いから、店長に認められたいんだよね。だから見て欲しいんだよ。だけど現場任せだから現場が荒れる。」

「それはあるかもな。お前は教育係でもあるし、店のエースでもあるし、みんなのフォローもするわけだろ。そして、お前を慕ってくれてるスタッフも多くいるわけだろ。するとお前に認めてもらいたいというスタッフも出てくるわな。店長よりも人望ついてしまうのも、やっかいなもんだな。」

ロースを口に入れると、じゅわっと油の甘みが広がった。運ばれてきたキンキンに冷えた生ビールをひと口飲んで、また至福のひとときだ。会話をテンポ良く返していける今日は、なんだか息子と波長が合うようだ。

息子の派閥が出来てくるのも時間の問題だろう。その時に、息子はどう動くんだろう。不満を募らせるのか、それとも将来への経験として培ってゆくのか。どっちを選ぶんだろう。

そう思った時に、僕は息子にちょっとした知恵を入れといてやろうと思った。

「あのさ、今日は7/27だけど、昭和51年の今日は、田中角栄がロッキード事件で地検に逮捕された日なんだ。田中角栄ってさ、戦後の焼け野原で建設業で頭角を現して政治家になったんだよ。建設会社ってさ、土地を買う、材料を仕入れる人脈がいる、カネを融資してくれる銀行との付き合いも必要になる、そして建築基準法の知識も必要だし、役所の許可をとりつけるのに官僚との付き合いも必要になる。」

息子はロースを口へ運んで黙って食べていた。やっぱり脂身が多かったようだ。

「つまり、なにが言いたいのかというと、ひとつ何かを成そうとすれば、いろんな知識や経験が必要になるというを、ここで田中角栄は学んだらしいんだよ。人が花開く時って、いろんな経験がひとつに交差した時なんだそうだ。お前も、留学の経験があり、視野を広げて、外国人の友達が出来て、英語を話せて、音楽があり、レザーの知識、服のパターンの知識、いろんな経験がある。そしてお前はバイトなのに、スタッフの教育をする経験、周りから実質的なリーダーとして仲間をまとめる経験ができている。これらの経験はいつか集約されて、大きな花を咲かせる事になる。しかも他人の会社で、他人の金で経験出来てるんだから、最高だと思わないか?」

テーブルは真っ赤で、ソファーも真っ赤、真ん中に肉を焼く丸い鉄板がある。店内は雰囲気の演出なのか薄暗い。話に熱中するあまりに、まわりのテーブルに座る客が消えて、僕たちのテーブルだけが明かりを灯しているように感じた。そしてじゅうじゅうと肉が焼けている。

「今の会社に入って、めちゃ視野が広がったよ。」

「というと?」と僕は尋ねる。

「人を見れるようになった。こいつは何が欲しいのか?とか、考えて仕事をしているのか?とか。」

「ほう。なるほど。」

息子は続ける。

「少し話すだけで、その人の底がわかるようになったというか、こいつ面白いなとか、つまらないなとか。」

息子の顔つきは、笑っていなかった。自分の変化に驚いている様子にも感じられた。

接客業でやっていけるのかと不安に思っていたが、息子はその中で経験を積んで、さらに進化したんだろう。そして限界突破するのに、今はマンネリ気味だと言うので、僕は息子に今度は知識を与えたくなった。

「人が成長するのはな、人、旅、本なんだよ。いろんな人と会って自分と違う考えに触れる事。そして暇があれば違う土地に行って、目新しい風習や歴史を学ぶ事。そしてネットで落ちてる断片的な情報よりも、体系的に整理されている本を読む事。これらのインプットの総量が人を成長させると・・・出口治明っていう人が言ってた。」

離婚してから僕はいろんな勉強をした。それも無志向にランダムに知識を求めて、行動、行動、行動で生活していた。自分を変えたかったから、必死になって詰め込んだ。その知識の断片を、いま息子に伝えている。

「出口治明さんの話は、是非お前に聴いて欲しい。お前にヒントを与えてくれるから。」

「それ、どこで聴けるの?」と息子は身を乗り出して言った。

いい感じのリズムで会話が進んでいる。僕も気分が乗ってきて、言葉がどんどん生まれてきた。

「Amazonオーディブルで、柳瀬博一のリベラルアーツ入門ってうポッドキャストがあってな、ゲストで出口治明さんが出てたんだよ。これめちゃ面白いからサブスク契約して聴いてみろ。お試し無料期間があるから、その間に全編聞いて後は解約したらいい。Youtubeや、TikTok観ている時間からすりゃ、よっぽど価値のある時間になるから。」

もう息子はウズウズしている。なんて素直な表情なんだと思う。好奇心と向上心が混ざったそれは、未来を見据えて、今をなんとか突破しようともがいている表情にみえた。


もがく友人

「友達がさ、めちゃ変化しているんだよ。」

「お前が動画を教えたって奴か?」

「そうそう。やりたい事が無くてさ、でも就職しないといけないから、どうしようと迷ってる。だからめっちゃあがいているよ。」

息子の友達は数少ない。マウントとって群れるだけの友達はいらないと息子の友達選びはハッキリしている。成人式の時も、同窓会があったのに、カネと時間が勿体ないと帰ってきたぐらいだ。好きな奴とは、別で会うからいいっと。

「もがいている奴って、日々考えているんだろうから、就職しても無駄じゃないと思うけどな。就職先で何かを掴むさ。それに若い時にいろいろやったほうがいいから、ダメだと思ったら転職したらいい。そのうち何かが見つかるさ。」

息子はオレンジジュースを飲んだ。グラスは大きな水滴がついていて、テーブルが濡れていた。

「あいつ、僕を見てさ、お前は変化と進化が速すぎるって言って焦っているんだよ。そしてどうしたらお前みたいになれる?って聞くんだよ。」

息子の身体はぴょんぴょんと飛んでいるように見えた。グラスが空になり氷がカラカラと回っている。ロースもカルビも無くなっていたが、僕たちは話し続けていた。店員を呼び止め「生ビールをもうひとつおかわり下さい。」と伝え、息子はオレンジジュースを注文した。

「やりたい事を探そうとして、面白そうな事を見つけてはチャレンジしてるよ。あいつは面白いわ。」

息子の表情は痩せているから笑う輪郭が際立ってみえるが、店の明かりがほっぺに反射していて、若いなと羨ましく思った。

「お前はいつだった?もがいた時って、お前にもあっただろ?」

息子は少し上を向く仕草をして、横を見たりと、思い起こしている表情をする。その表情を見るのが楽しくて仕方がなかった。

「高校2年生ぐらいかな。その時に服がいいなって思って、そこからモヤモヤしてたんだよな。」

「なるほど。荒野行動のアカウント売買してたり、バイクの、あ、そうかパパのところに来たぐらいの話しか、それ。」

僕がデイで働いていた時に、チャイムが鳴って出たら息子だった。詳しくは2度目の来訪だったが、その時にバイクの免許を取りたいと僕に言ったわけだ。息子は僕に会いに来るという行動を起こした。行動をすることで報酬を得た。それが息子の基本行動になった。

反対に行動もしないのに、「あんただけずるい」と言うのはおかしくないか?とも。行動しなくちゃ世界は1ミリも変化しないというのが息子の理念になる。

行動、行動、行動で息子の世界は広がってきた。行動こそが「なりたい自分」へのパスポートだ。

そして韓国へ留学の友達に会いに行き、服のヒントをもらい夢へとつながった。

「そう考えると、ずいぶんな歩みだな。」としみじみ言うと、息子も「そうなんだよな。良くこの景色を見れたと思うよ。高校3年の時点では全く方向が定まってなかったからな。」と言った。

僕は僕で、離婚からの7年。いろんなものを失った経験をしたけども、失ったものが大きすぎたぶん、変わろうとするエネルギーも大きかった。

エネルギーが大きかったから、古い自分を引き剝がせたのだ。心身ズタボロになったけれど、あれが無ければ今はなかったと思う。


ゾンビ

「パパ、サイコパスおじさんの岡田斗司夫って知ってる?」

「あぁ、知ってるよ。デブの良く笑いながら嫌味を言う人だろ?」

良くYoutubeのおすすめで上がってくる。昔は観ていたけど、もう僕の興味は違うところにあり、あまり今は観ていない。

「サイコパスおじさんがさ、2011年に今後情報洪水になりますよって警告してるんだよな。そして、無料コンテンツが大量に作られて、働いて、帰って、無料コンテンツを消費するゾンビが生まれるって言ってるの。もうその通りになってるんだよね。TikTokとかYoutubeのショート動画を見続けている人っているでしょ。あれをゾンビっていうわけだよ。」

なんだか胸がきゅうと締め付けられた。ショート動画を見続けていて、この動画で辞めようと思っていたのに、次の動画も再生してしまって、無価値な時間を過ごして後悔するやつだった。僕にも覚えがあったので、あの後悔する時間の使い方は思い出すだけで苦しくなる。

「スマホに表示される情報もアルゴリズムで個人にカスタマイズされて表示されるでしょ。消費のゾンビになって、スマホに表示される情報が、その人の世界になるんだよ。思考が支配されるんだ。」

「スマホに出てくるニュースとか、そういえばカスタマイズされているわ。つい読んでしまってるけど、あれもGoogleに操作されてるんだな。自分の好みを分析されて、その情報だけを与えられ、思考をコントロールされる家畜になるんだな。」

情報社会の怖さだろうが、わかっていてもその罠につかまっている自分がいるから、まさに人間の狂気だと思う。

「そこから逃れられる術ってなんだと思う?」と息子が聞いてくる。身を乗り出し、僕の目を見て。

僕はさっぱりわからなかったから、「スマホを見ないことか」と当たり前の事を云うと、息子は意外な事を言った。そしてそれは、芯を捉えていた。



「やりたい事を見つけることだよ。」



最近、僕にもやりたい事が出来た。小説を書く事だ。息子は服作りだ。すべてこれは創作活動だった。創作には自分の世界観を確立させる必要があった。

「情報に左右されない、自分の軸を持たないと、自分が溶けてしまうと思わない?」

「あぁ、そう思う。確かにそれは的をついていると思う。」と僕は息子を見て言った。

息子はじっと僕の目を見て独り言のように言った。

「自分の軸がないと、自分がなくなるんだ。」

父の答え

「そしたら、お前の世界観ってやつは、自分を作っているわけなんだな。」と僕は言い、自分自身に落とし込んでみると、確かにそうだと思った。過去の自分は他人に自分を渡していたような気がしたから。

「友達も、いま必死に行動しているけど、やりたい事がみつからない。でもそこに怖さを感じてる。自分が何者なのかって。」と言い、ひと呼吸整えて息子は続ける。

「サイコパスおじさんの言う、情報の洪水のこの世界で、ゾンビになる人がいる。そのゾンビは、自分の世界観を持っていない。そして、意図された情報に支配されて生きる事になるんだよ。」

自分の軸がなければ、他人に左右される。自分の意思はどこにあるのか?自分の意思は、自分のものだ。他人に操作されてなるものかっと僕は息子の話を聞いていて思った。

「パパも小説を書いてるだろ。創作してる。」

創作する事は、自分との対話だ。自分にとって何が大切なのか?それを問い続けてここまで来た。

「創作する者か、消費する者かで生き方がだいぶ違ってくるよね。」と息子はオレンジジュースを飲み、赤いソファーにもたれかかった。

「お前の言うとおりだな。やりたい事が見つかっている人は強い。そういう事だろ?」

生ビールの水滴を手で落としたら、手が冷たく濡れた。そのまま口に運び、冷たい苦い感覚が、口の中に残るロースの油を流してくれた。

息子を追いかけて

店を出ると、生暖かい空気が流れていた。国道を走る車が騒がしい。僕たちは歩いてきていたので、ぶらぶらと公園を抜けてゆく。

昼と間違えたセミが鳴いていて、街灯近くの木から聞こえたので、太陽と間違えたのかもしれなかった。それが情報洪水の社会の縮図に見えて、街灯にだまされて鳴くセミが哀れに思えた。

自分の軸がなくなるか・・・

息子は僕の横を歩いている。つかず離れず、まるで介護されているようだ。

やりたい事が見つかっている人は強いか・・・

この情けない失敗だらけの父親を、息子はとうに追い越している。父は息子が夢を追いかける姿を見て、父は思い出した。高校の時に小説を書いていたことを。そして再び小説を書き始めた。

今度は応募作を。今までの人生経験があるからこそ書けるものがあるハズだ。

そして一行書いて、そして書いて、書いている。

Star Trek Picard Final Season 3 Opening

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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