壊れた後に創ったもの

「あっという間に時間が過ぎるわ」

息子は表情を豊かに目を見開いて話している。

「出勤してから退勤するまでの時間があっという間。電車はいつも終電で帰るしね。家に帰ると何もしたくなくなるよ。」

楽しいを軸に生きている息子は、力が漲っているような気がした。

息子は面白い事にしか熱中出来ない性質だった。ラーメン屋も寝坊で辞めたし、駅前のローソンも一瞬で辞めた。牡蛎小屋のバイオは、上司と喧嘩して辞めた。

続いているということは、仕事が面白くて仕方がないんだろう。やっと息子は自分の足で立つことが出来た。自らの人生を楽しんで味わっている。

目次

焦る時間

「僕、会社を辞めることにしたんです。」

いつものスーツ姿とは違い、ラフな私服で話すのは、施設紹介業者の営業マンの長谷川くんだった。彼が営業に来た時は新人で、右も左もわからない営業マンだった。業界の事をなにも知らない様子だったので、大丈夫か?と呆れたほど、新人営業マンだった。

やる気みなぎる青年が、実績を出し始めて結果を残すようになり、その報告だけに営業にくる始末で、長谷川くんはどうやら僕を気に入ってくれているようだった。

熱血青年の28歳は、少し興奮気味に続ける。

「今回、会社に休職させられまして、マジで腹が立って。」

そういう長谷川くんは、2025年9月にうつ症状になり、仕事を休職したことがあった。そこからの再びの休職通知だった。

「僕はまだまだやれるんですけどね。ちょっと不眠が続いただけなのに、会社が休みなさいって言うんですよ。」

長谷川くんの怒りは止まらなかった。

まだまだ出来る。僕は頑張れるのに、会社が待ったをかける。まるでタオルKOされたボクサーのようだ。まだリングで戦えるのに、セコンドがタオルを投げたといった感じだろう。

それで辞表を出したという事だった。実績を出していたから、慌てる事はないと僕は正直思ったのだけど、彼の状況を知っている僕としては、少しだけ彼の焦りがわかった。

「同棲中の彼女もいるしな。結婚も考えているんだろ?」

去年、彼の弟が結婚したと聞いていた。弟に先を越されたとも。それで焦っているのかもしれない。休職すると給与が入ってこないし、結婚も遠のくという話だろう。

「そうなんですよ。」

長谷川くんは、顔を真っ赤にしながら、話を続けようとしたが、僕にはまだ仕事があったから、ゆっくり話も出来ない。

「ゆっくり話を聞くから、今度飲みにでも行こうか?」

と言うと、彼は表情がパッと明るくなり、「いつ行きます?」と前のめりになった。

いつか?は通用しそうにないなと思い、僕がスマホのカレンダーを見ながら、来週の水曜日はどうかな?と問いかけると、即答で日にちが決まった。

彼はニコニコして「じゃぁ、楽しみにしいます!」と帰っていった。僕はデイルームのドアを閉めて、僕の周りには尖った奴が集まってくるなぁとしみじみ思った。

楽しい時間

ウォーキングから帰ってきて、今日はスープカレーを作るつもりで食材を買い込んで帰ってきた。食材を蒸して、蒸し器の底に溜まったミネラルたっぷりの汁をカレースープにして、ナンをつけて食べるんだ。想像しただけで美味しそうだ。

バイクを車庫に停めて、車が無くても不便じゃないな、とか思いながらシャッターを降ろすと、後ろからふいに声を掛けられて身体にビクッと電気が走った。振り向くと息子が「おーい」と手を上げている。

「なんだよ。びっくりさせるなよ。」

黒の服を着ているから、闇夜に溶け込んでいる。つい最近、近くの料亭に空き巣が入ったばっかりだったので、不審者には敏感なんだ。

「なんだ。今日は仕事は休みなのか?」と聞くと

「3連勤が終わった後の休みだよ。また明日から2連勤して休み。週5で働いているからね。」

息子は相変わらず忙しそうだ。だけど本人は楽しい時間だから、さして忙しさも苦ではないだろう。

「そうか。お前が週5で働くとはな。コンビニを一瞬で辞めた奴とは思えないよ。」

息子は笑って、「コンビニは面白く無かったよ。」とあっけらかんと言った。

研修したほうとしてはたまったもんじゃない。折角教えたと思ったら辞めてゆくんだから。まぁ、これが息子の性質なんだから仕方がない。息子は面白い事を軸に生きているから、服を作ったり、外国人と話せる環境に身をおいたり、変化している友達と遊んだりしている。それが息子の生き様だ。

「メシ行くか?」

と息子に言うと、「ちょうど食べに行こうと思ってたとこだったんだよ。」と言って、二人で車に乗り込んだ。

自分なりの答え

「は?つまり駅員になるってか?」

僕は長谷川くんの突拍子もない選択に、いささか虚をつかれて聞き返した。

「そうです。駅員です。こっちのほうが安定するんで、これでいいかなと思ったんですよ。」

退職届を出して、そこから失業手当は捨てて、もう面接を受けていた。それが鉄道関連で、しかもすでに最終面接まで進んだと話していた。

「じゃぁ、次の職種は福祉じゃないんだ。ちょっと残念だな。君はお母さんが福祉の仕事をしているから、それでこの道に入ったとか言ってたじゃないか?」

全く畑違いの転職に、僕は次世代を担う福祉の人材が、業界を去ろうとしている状況に、心底残念に感じた。

「結婚も考えているし、それに家賃もあるんですよ。いろいろと将来の事も考えて安定したとこを探したんです。」

難波の近くだったので、ワンルームといっても家賃は高額になる。28歳の青年が住むには、いささか生活レベルを上げすぎだとも感じたが、同棲している彼女の希望らしかったので、気張ったのだろう。

そりゃぁ休職させられる事も、無職であり続ける事もプレッシャーになるだろうなと納得した。

「いろいろたいへんだねぇ。」

僕はハイボールを飲み干し、定員におかわりを注文した。長谷川くんのグラスを少し見て、「それとー」と僕は続けた。

慌てて長谷川くんは、メニューを眺めて「カクテルのピーチで」と言った。

この青年とは25歳ぐらいは離れているのか。娘と歳が近そうだ。そうか取引先の相手といったとて、娘と話しているようなものかっと考えると、急に娘に会いたくなった。どんな話が出来るんだろう。

話題を変えて、僕は長谷川くんに質問した。

「これからAIの時代になるけど、これからどう世界は変わってゆくと思う?」

っと、とても漠然な質問を投げかけた。若い人とこれからの未来を語るのは、僕の道楽だ。それに、いつも息子と問答している会話のひとつにすぎなかったが、たぶんこの問いは長谷川くんにとって、必要な問いだろうとも僕は思った。

「なぁ。どう変わってゆくと思う?」っと僕は彼の瞳の奥を見据えて尋ねた。

明確な答えは長谷川くんからはなかった。彼の発想が枠にとらわれすぎているから、答えのない問いには、自分の答えがないわけだった。

この時、長谷川くんのなかに若かりし時の自分を重ねていた。

自覚すること

車を飛ばしていつもの「山城」といううどん店に向かっていた。

「やっぱりさ、AI時代は使いこなす奴と、使えない奴の格差社会になると思うんだよね。」

息子は助手席で勢いよく話し続けていた。カーステレオにはボブ・マーリーが流れていて、軽快なレゲエが流れている。窓を全開にして夜風が気持ちよかった。

「そうだな。AIを使う人は増えても、どんな問いを投げるかは、その人のIQによって違うからな。構造で見る人、感性を使う人、好き嫌いの単純な感情の人で、投げかける問いはだいぶ差が出るだろうな。」

車は山道のワインディングロードを、ヘッドライトの明かりを頼りに走ってゆく。この山を抜ければ、新興住宅に入り、いっきに賑やかな街明かりになる。

「高校の同級生が、大学で就職活動をする時期になってて、みんな死んでるわ。」

やりたい事がなければ、どうしたってそんな反応になるのは良くわかった。僕も息子の歳ぐらいで、やりたい事はなかったし、なんとなく大きな流れに身を任せていたように思う。

「たぶん、とりあえず大学進学を決めて、それでも自分の好きな事や、やりたい事をみつけられていないんだろ。」

息子が、僕のところに進路相談に来たのが、高校3年の夏の頃だった。スタイリストになりたいという時期もあったが、美容室の担当に勧められただけで、ネットで調べて給料が思ったよりも低い事がわかると、やる気を失う事になる。つまるところ、大学進学か、専門学校か、就職かという3択だったけれども、やりたい事も、好きな事も、面白い事も、さして見つからず、あの頃の息子はため息ばかりついていた。

「高3の進路を決める時にさ、結局やりたい事がないとわかったわけじゃない。残酷な現実だったけど、お前にとって重要な事だったと思わないか?」

息子は黙って聞いていた。

「嗚呼、俺にはやりたい事がないんだって自覚することが、実はスタートラインだったわけだよ。」

息子はやっと僕の言いたい事を理解したのか、「確かに」と言った。

「お前の友達の大学生も、そのことに薄々は気がついていても、目をそらし続けていたのかもしれないね。そして今、就職という時期となって、自分自身と向き合わなかったツケがまわってきて、今頃焦ってきたという事なんだろうね。」

そう話した時に、山城の看板が見えてきた。橋を越えてある店だから、街明かりが暗くなったところに、白い蛍光灯が灯っていた。

妻の影

「全くわかんないです。」と長谷川くんは言った。

AI時代に到来して、時代がどう変わってゆくか?そんな問いを長谷川くんに僕は投げかけたんだけど、長谷川くんはとても正直だった。素直にわからないと答えるあたり、彼の誠実さらしさが見て取れた。

「そうだね。わからないよね。ホントに先がわからない時代にきてるのだと思うよ。」

と僕はハイボールを勢い良く飲み、そして続けた。

「そして、先が見えない時代の前に、自分がどう生きたいのかがわからない、という話にも通じるような気がするんだよ。」

僕はもう長谷川くんに問いかけず、僕の意見として添えた。

「つまり、僕が言いたい事は」

店員が運んできたハイボールと、カクテルピーチを長谷川くんに渡しながら僕は続けた。

「わからない時代だからこそ、自分の軸が必要になると思わないか?と言っているんだよ。」と僕は言葉に力を込めて置いたのだったが、長谷川くんは、息子のように「確かに」とは言わず、眉をひそめていた。

これはやっぱり結婚が近いのもあり、安定を選ぶ心理も影響しているのだろうと思った。昔の僕を彼に重ねて見てしまうのも、たぶん彼は役割を演じる人生の入口にいるからなのだろう。

僕はハイボールのグラスを口に傾けた。冷たい氷が歯に当たり、味が濁った。

僕がそうだったように、長い人生のなかでは役割で生きる事もあるのだろう。これを僕は全否定はしない。これから結婚して、たぶん子どもも出来るだろう。そんな時に、男としてというジェンダー思考で、パートナーを経済的に守りたいという気持ちは、とてもわかる。

男らしく、カネを稼いで家庭を支えろ・・・か。自分に気合を入れるには十分すぎる言葉だ。

その言葉が空回りするとき、僕は何が起きてしまうのかを、もう知ってしまったゆえに、長谷川くんと話していて気持ち良く酔えない。

「なぁ、長谷川くん。若いうちはさ、いくら転職してもいいと思うんだよ。企業での安定っていっても、そんな幻想はもう崩れているからね。お金は組織に流れるのではなくて、個人に流れ始めているから、いろんな可能性があるのだと思うよ。」

どう言葉を選んだら伝わるのだろう。

もしかしたら、別れた妻も今の僕と同じ気持ちだったのかもしれないな、っと僕の隣で、妻が座っているような気配を感じた。

変化と成長

のれんをくぐった時に、不愛想な店主が「そちらへ」と言った。店主は寡黙な人で、紺色で麻の羽織を着ている。僕たちはカウンターの一番奥に案内された。

田舎に帰ったような懐かしさがあった。厨房を囲むようにカウンターがあり、3名の先客が呑んでいた。年の頃だと25歳ぐらいだろうか。女性1名を挟むように2名の男性がカウンター中央で楽しそうに談笑していた。

「外人と話すのが面白いわ。いろんな人がいるよ。エリートなイギリス人で、娘を大学にやりたいんだけど、娘は大学に興味がない家族とか、インド人で親子で2週間旅行をしている人とか。」

車の中でいろいろ会話を交わしているのに、僕たちの会話が途切れる事は無い。カウンターに座りメニューも取らずに、息子は話しはじめる。

「みんな日本ってあり得ないぐらい安いなって驚いているよ。服がこんな値段で買えるのか?ってびっくりするからさ、その分、僕ら日本人のお給料も安いんですよ、って教えてあげると大笑いするんだよ。こういった話をしてると自然に仲良くなって、お金を使ってくれるんだ。」

外人と話すのが面白い、ただそれだけで息子は客と仲良くなる。そして服を売り上げる。結果的にトップ独走状態だった。

「店を巡回しながら、他のスタッフが困っていたらフォローしてるからさ、他のスタッフが慕ってくれるようになったよ。」

メニューを見て、僕は厚揚げ、サバの塩焼き、ざるそばを注文した。息子は手羽先とあんかけうどんを注文する。カウンターの向こうで注文をとる店主は、いつものように寡黙でどことなく芯を感じた。仕事に誇りを持っているのだろう。

ここの店主と同じものを、息子の中に育っているような気がした。そして僕も最近は息子に影響を受けている。だからこの店は落ち着くのだろう。車で30分も走って、わざわざこの店にやってくるのは、たぶん、そういうことなんだろう。

面白い、楽しい、好きを探して辿り着いた場所。そこが息子の今になっている。そこで給料となっているから息子の戦う場所は設計が必要だ。今回はうまく導けたかもしれないけど、後の事はわからない。

そして今の場所が永遠に続くとも限らない。

今は服屋で無双していても、次の面白いを見つけると、どんどん変化してゆく。それが息子だ。そんな生き方を僕は受け入れるようになった。

昔の僕からは考えられない事だ。

役割に徹した6年

育成会会長に就任した後、僕はひとつ年上の先輩、篠原くんと、榎谷くんとの飲み帰りだった。自転車で並んで帰っている最中に電話が鳴った。

「会長、ちょっと話があるんですけど」と電話の主は高瀬だった。彼は祭礼団体の組長をしている。芸人でいうと霜降り明星の粗品の目つきに似ている。いつも戦闘態勢って感じだ。

「今日、子ども会の申し込みがあったじゃないですか?」

「ああ、育成会館であったよ。」

「うちの組の村田の嫁さんが申し込みに行ったらしいっすよ。そしたら自町じゃないから入れませんって言われたそうなんでぇ。村田はうちの町で祭りに参加してるんすよ。それぐらい考慮してくれたっていいじゃないっすか!。」

いきなり喧嘩腰だ。相変わらずの高瀬節といったところだ。

たぶん、話としてはこういうことだろう。

子ども会の入会を認めてもらえなかった村田が、組長の高瀬を通じて、無理を通そうと考えた。組長の高瀬はそれに応じて、僕に連絡をしてきた。たぶん、高瀬は俺が言えば必ず折れると僕を舐めてかかったのだろう。だけど、仁義の話しは祭りで通用したとしても、育成会のルールは通用しない。組長である高瀬の一言ですべてが決まる祭礼団体では、仁義は最優先すべきことだ。だけど、すべてを合議制で決める育成会にとって、最優先は規約だった。

「そりゃ無理だ。」と僕は短く答え、そしてひと呼吸入れてから、ひとつ提案を持ちかけた。

「今のままでは無理だけでも、抜け道ならひとつ提案できるよ。確か村田の実家は自町にあったよね。子ども会の名簿に載せたいのなら、学校に届けてある子どもの現住所を実家にしなよ。それで自町の名簿に載るから子ども会に入る事ができるよ。」

僕からすれば、仁義に代わる提案だったが、それでも彼らは納得しなかった。そして高瀬は抗議の意味も含めて、子ども会の廃品回収の手伝いを、組ごとボイコットした。

明らかにこれは挑発だった。だから挑発に乗るわけにはいかない。じっくりと受けるが吉だと動じなかった。

僕は、自分の所属している育成会をはじめ、世話人、若頭、青年団などの各団体に説明に走らなければいけなかった。そしてひたすら頭を下げた。ここでしっかり育成会の立場を説明しておかないと、仁義が通じない育成会が悪い事になってしまうからだ。

勢い優勢な仁義の圧力に屈せず、理屈で受けて流す。これが僕の戦い方だった。そしてこれは、勃発してから4年目に解決した。組ごとボイコットしたのを収めるのに4年の年月がかかった。ここで僕は育成会会長の責任から逃れられたわけだ。

年功序列で、いつかはまわってくる役回りだった。育成会会長なんて好き好んで誰がやるのだろう。だけど、この町で店を構えて、家庭をもち、子どもも育ってゆくから、断るわけにもいかず引き受けた育成会会長だった。

就任初日に大きな問題を抱えることになり、4年も引きずった案件だった。

「育成会会長はもう終わったんやぞ。そろそろ幹事長の職責をまっとうせいや。」

そう同年代の水野が言った。

十分やっている。幹事長の仕事を十分やっていたが、そのたいへんさを理解しようとしない同級生が一番の難癖だった。

「村田くん、寄付を200万集めないといけないみたいだぞ。」

同級生で、僕と同じ裏方で動き回っていた村田に連絡していた。

「あぁ。こっちにも連絡が来て、さんざん怒鳴られて今、電話切ったとこなんだよ。」

村田も余裕がなさそうだった。

「祭りまでもう少しだから。頑張って乗り切ろうな。」

と励まし合った村田は、祭りが終わり、最後の清算を終えた時に味覚を失った。精神的によほど追い詰められたのだろう。ラスト1年を残して村田は燃え尽きてしまい、残ったのは僕だけになった。

これで終わりだと思った最後の年も、コロナ過で来年に持ち越された。生き絶え絶えのなか、やっと6年目を迎えたが、時すでに遅しだった。

役持ちの6年、ここを乗り切れば楽になれると思ったが、すべてを失って僕も壊れる事になった。

カウンターの片隅で

でも、今ではそれで良かったと思っている。

あの挫折が無ければ、僕は一生生き方を変えなかったろう。生き方が変わっていなければ、息子の生き方を受け入れる事もないのだから。

僕は長谷川くんに、昔の自分を重ねてしまう。いろいろ抱える事もあるだろう。それが悪い事じゃないけど、過剰にそちらに傾くと僕みたいになってしまう。

自分だけならまだいいが、家族も潰してしまっては、僕の人生に意味があるのか、とか考えてしまう。それに自分だけ犠牲になれば、という考え自体が破綻している事に気がついた。

自分を大切にするから、他人の大切にしているものが見えてくるのであって、だから自分を大切にすることが、家族それぞれの人生を大切にして支える事ができるのだと思う。

「最近、服の作り方も変わってきてさ、ちょっと美学が変わってきたかな。」

息子は手羽先を食べながら言った。

「左右対称じゃなくてもいいかなと思って、素材も使ってアシンメトリー的な感じで」

アシンメトリーは左右非対称という意味だけど、よくドラマやアニメの衣装デザインに使われていた。

「岸部露伴みたいな感じかな?」

とスマホを取り出して画像を見せると、「まぁそんな感じ」と息子は言ったが、たぶん息子の言うそれはもっと洗練されているのだろう。

「なんだか仕事も面白くなって、服づくりもいい感じにアイデアが湧き出してくるよ。」

そういう息子は、自分が作ったジーンズを履いている。最近は染色にもこだわってきたので、ジーンズのシワが立体的に浮かび上がっているように見えた。

店主に「お会計お願いします。」と言うと、紺色の羽織を着こんだ店主が、黙って金額の書いた紙をカウンターの上に置いた。

独特な空気がカウンターの片隅で流れていた。

迷信

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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