ICFとは
「International Classification of Functioning, Disability and Health(国際生活機能分類)」の略です。
ICFの意味と目的
個人の健康状態や障害を評価するための包括的な枠組みです。
- 「心身の機能と構造」
- 「活動」
- 「参加」
- 「環境因子」
- 「個人因子」
5つの要素をもとに、健康や障害を捉えます。
その主な目的は、個人がどのような生活機能を持ち、どのような活動を行い、社会にどのように参加できるかを理解することにあります。
ICFの意義
ICFは、従来の「疾患中心」の障害の捉え方から、より「社会的な参加」や「環境」との相互作用を重視した枠組みを提供しています。そのため、ICFは次のような意義を持ちます。
個人の生活全体を評価
障害を「できないこと」だけでなく、環境や支援の影響も含めて考えることで、個人の生活全体を捉えられます。
ポジティブなアプローチの実現
個人の持っている力や強みを引き出し、活動や社会参加を増やすための支援が可能になります。
多職種の共通言語として活用
医療、福祉、教育など多様な分野でICFが共通の枠組みとして使えるため、異なる職種間の連携がしやすくなります。
ケアプランに活かすICFの視点
利用者さんの人生に着目します。何を感じて、何に喜び、何に怒って、どういった価値観をもって生きてこられたのか?
利用者さんの人格とか、経験してきた社会的地位であったりが、利用者さんの歩んできた人生そのものです。挫折もあれば、乗り越え成し遂げてきたこともあると思います。
人生経験のなかで培った自信やプライド、あるいはトラウマ。そいういったものが人生の選択に大きな影響を与えてきたのだと思います。
今の利用者さんをカタチ作っているものを、客観的に捉える。すると今の利用者さんの病気の捉え方、その後の後遺症の受け止め方、そして残された機能をつかって、再び人生を創り直してゆくプロセスが見えてきます。
一般的には利用者さんのアセスメント(課題分析)をする場合は、医学的視点、リハビリ視点、ADL(Activity ofDaily Living)身体的機能に着目して支援計画ケアプランを作成します。
ここに利用者さんの価値観や人生観などを取り入れることは、非常に稀です。
ICFを取り入れたケアプランは、これに「その人らしさ」を含んだ課題分析を行い、その人らしい支援計画を立てていきます。
ICFのイメージ
上の図はICFを体系的に描いた図です。
利用者の環境因子、個人因子がベースにあり、そこから身体機能、本人の活動、社会参加へと繋がってゆく。医学と身機能だけで課題分析をするのではなく、環境因子や個人因子までも含めて課題分析を行い、健康の評価をするのがポイントとなっています。
しかも、観光因子・個人因子・身体機能・本人の活動・社会参加のそれぞれのカテゴリーは相互の作用しあうので、どこかに課題があれば、その課題は全体へ広がってゆくことになります。
課題を捉えながら、それぞれにどう影響を及ぼしているのかを俯瞰で捉え直す事で、ICFの視点で利用者が、これからどう生きていきたいのかを捉える事が出来るわけです。
例えば、高血圧の利用者がいたとします。
医療では食事療法と薬物療法となります。塩分控えめの食事をして、医師の処方どおりクスリを飲むというのが短期目標になってきます。
ICFの視点では、
【環境因子】食事を作ってくれる人はいるのか?お惣菜ばかりなのか?など何が課題解決の障害になっているのかを把握する。
【個人因子】健康意識はあるのか?病識はあるのか?高血圧は遺伝であるのか?治療意欲はあるのか?問題意識は持っているのか?など何が課題解決の障害になっているのかを把握する。
【身体機能】認知症はあるか?麻痺はあるのか?など身体機能の課題
【活動】現在のADL状態からIADLの能力の課題
【参加】環境・個人・身体機能・ADL・IADLから、社会参加や他者との繋がりをもって生活を営めているのか?
各カテゴリーでどこに課題があるのかを課題分析しながら、その人らしさを軸に今できる自立を考える。それは医学を当てはめるのではなく、その利用者の生き方に沿ったプランニングを行います。
もうひとつ例を出すと、パーキンソン病の利用者が、筋肉のこわばりや、ADLの低下、病気の進行をどう受け止めているのか?
失われてゆく機能よりも、残っている能力を前向きに捉えて、まだまだ人生を楽しもうと努力しているのか否かでは、ケアマネジメントは変わってくるのだと思います。
もくじ
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ICFの視点とケアの専門性
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試論ノートに学ぶ
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ICFの視点でケアプランを考える。
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ICFの視点を活かしたケアプラン作成のプロセス