サービス付き高齢者住宅について
サービス付き高齢者住宅のケアプランは、多くの場合、限度額いっぱいになるよう単純な足し算で作られています。結果として過剰な介護が提供され、入居者の残存機能を奪ってしまう。要介護度が上がればさらに限度額も上がり、事業者は儲かる。これでは完全に悪循環です。数字の上では「手厚い支援」のように見えても、実際は本人の生活力を削いでしまう仕組みなのです。
自立支援という質の高いサービスとは
これに対して、居宅サービスのケアプランは全く逆の構造です。利用者が施設に入れば一人分の売上が減るため、できるだけ在宅で生活を続けられるよう自立支援に力を入れます。悪化を防ぐために必要なサービスを組み込み、地域の人やボランティアとつなぐ。利用者が元気を保てば、介護度は上がらず、本人も事業所も地域もプラスになる。まさに好循環であり、自立支援の理念に合致しています。
要介護の出現率は右肩上がり
しかし現状は、サービス付き高齢者住宅が幅を利かせており、この流れを止めるのは容易ではありません。だからこそ視点を「介護にならないため」に移すしかないのです。地域包括支援センターや社会福祉協議会、役所が行うサロンや体操教室、地域ケア会議で見えてくる課題を解決し、人と人をつなぐ。相互扶助の関係を作り、生きがいを持つことで介護予防につなげる。これしか出現率を下げる方法はありません。
地域活動に参加しない人々
ところが、実際に地域活動へ参加している高齢者は全体の1〜2割程度。残りの8〜9割は参加していません。この層こそ、確実に健康寿命を削り、やがて要介護状態になるリスクが高い。だからこそ、その一歩手前の要支援期で支える仕組みが必要です。
現行の介護予防サービスの問題点
現行の要支援サービスは、半日や短時間のリハビリが中心で、人とのつながりを育てる時間がありません。3時間リハビリをしてすぐ帰る――これでは交流は深まらず、関係性も成長しない。やはり1日型のデイサービスが必要になります。そして入口は「リハビリ」ではなく「入浴」にしたほうがニーズは広がります。お風呂は誰もが入りたいし、家族も入浴介助の負担を避けたい。入浴をきっかけに1日デイに来てもらえば、自然と交流や活動も加わり、結果的に自立支援につながります。
この要支援サービスの拡充こそが、地域活動に参加しない8割~9割の層にアプローチできる方法だと僕は思っています。これで要支援のまま要介護にならなければ、出現率の上昇は止められるでしょう。
高齢化で高齢者の総数は増えていても、要介護の出現率さえ上昇を抑えていれば、介護保険料の増加も抑えられる可能性が見えてくるのだと思うのです。
解決策の提案
だからこそ、介護予防にもっと予算をつけるべきです。予算が増えれば、地域活動に参加しない8割の層にもアプローチできる環境が整います。訪問や小規模な集まり、送迎付きの外出支援など、多様な形で関わることが可能になるでしょう。元気な高齢者が増えれば、サービス付き高齢者住宅に入らざるを得ない状況も減り、弱ることもない。本人も家族も幸せです。もちろん入居者が減れば、収益モデルがそれに依存している事業所は淘汰されますが、QOLの低いサービスは介護保険から除外しても問題はありません。そんな日が来ることを、僕は心から願っています。