会議室の空気がゆるんだ日

そこにいた人も、離れていた人も、
流れの中では同じように息づいている。

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会議室の空気がゆるんだ日

午後の会議は、いつものように静かに始まった。
市職員が資料を淡々と報告をして、役員が質問をする。
そんな流れの中で、ふと気になることがあった。

地域には、地域活動に参加していない高齢者がたくさんいる。
けれど議論の場では、どうしても参加している人だけが話題になる。
参加延べ数を並べて介護予防の報告としている事にふと違和感を感じた。

だから僕は手を挙げてこう質問した。
「参加していない人たちは、どれくらいいるんでしょうね」
そう口にすると、部屋が少しだけ止まった。

誰も答えられなかったというより、
そこに“踏み込んでいいのか”を迷ったのだと思う。
行政の立場でも、地域活動の主催者でも、把握しきれない領域だからだ。

でも、人が見えている範囲だけで介護予防を判断するのは難しい。
そんな思いが重なって、もう一度だけ言葉を添えた。

「だって、介護予防って参加していない人を巻き込まないと達成されないじゃないですか?」

すると、場の空気が少しだけ変わった。
否定ではなく、「そういう考えもあったか」という
素朴な驚きに近いものだったと思う。


ただ、場を整えたかっただけ

発言のあと、
会議室の緊張が少しやわらいでいくのを感じた。

自分が特別なことをしたわけではない。
ただ、現場で見てきた風景の延長で話しただけなんだけど・・・。

委員長がまとめてくれて、
それに乗っかるカタチで「すんません。長々と訳わからん事いいまして」と言うと、軽く笑いが起きた。
その一瞬で、みんなの肩の力がゆるんだ気がした。


会議のあとに残る“ほんの小さな余韻”

会議後の雑談では、
「なかなか面白い話しますね」と
声をかけられた。

褒め言葉というより、
“気づきの種を受け取った”と言われたような感覚だった。

人は、強い主張よりも、
こういう小さな視点のほうが
ゆっくりと心に残るのかもしれない。


風穴ではなく、風の入り口

振り返ると、
今日の発言は何かを変えるためのものではなかった。

ただ、

「誰も見ていなかった場所にも、
 そっと目を向けてみませんか」

という気持ちを置いただけだった。

その柔らかな変化が、
この先の議論につながればいいなと思う。

そう思いながら、夕方の埃りっぽい役所の廊下を歩いた。

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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