人生のどん底で、ようやく自分の失敗を認めた。
お金の学びも、あの痛みの続きにあった。
学んだことが、人を救った夜
友達が、ローンで300万のバイクを買った。
車もローン。おそらく家もそうだろう。
欲しいと思ったものはすべて分割で手に入れてしまう。
それで支払いが回らなくなり、「少し貸してくれ」と言ってきた。
友達25万ほど。



え?25万!?
当時は息子が留学する前で、数百万単位の振込予定があったので25万でもきつかったし、なによりも息子のためにお金を使うのは何とも思わないが、浪費しまくってる奴のために、なぜ一生懸命働いた金をつぎ込まなくちゃいけないんだという思いもあった。
だから一旦は断ったんだけど、また再度連絡が来たので、もう呆れて「いくら?今から振り込むから」とスマホで振り込んだわけだ。
その金は1週間ほどで返ってきた。
返そうとする誠意があるだけ、まだ大丈夫だと思えた。
ギャンブル性のある資産を提案
ただ、その“まだ大丈夫”が、どこまで続くのかは分からなかった。
どれだけ働いても、使い方を変えない限り、お金は貯まらない。
25万円を返してもらった席でボクはぽつりと言った。



「余剰金をつくらないと、何かあった時に人生詰むよ」
彼は笑いながら首を振った。



「いや無理やって、そんな余裕ない」
金を借りた事になんの悪気もなく、返したからいいじゃんみたいな態度だから、僕は加えて言った。



友達関係でもさ、金の貸し借りがあれば、もうそれは上下関係が出来てるんだよ。そんな関係は嫌だろう?
その言葉で、やっと彼も真剣に話を聞いてくれたようだった。
その表情に、かつての自分を見た気がした。
貯金の話は理屈ではない。
痛みや焦りを経験して初めて、その必要性が身に染みる。
頭では分かっていても、実感がなければ行動にはならない。
今の彼に貯金を勧めたとて無理だと直感でわかった。
ならば、彼の衝動を利用しようと閃いた。
彼は競馬を好み、勝負の感覚を楽しむ性格だ。
ならば、そこに合わせて方向を変えればいいと思った。



「ギャンブルが好きなら、仮想通貨やってみたら?チャートの振れ幅が大きくてスリルはあるよ」
実際に僕は10万円をエンジンコインというアルトコインに突っ込み70万にまでして、その金でバイクを買った。その経験も含めて話をしてると最初は笑っていた彼も、次第に興味を示した。
数字の動きを見ながら一喜一憂できる点では、ギャンブルと確かに似ている。
違うのは、負けても利益確定しなければ、含み損でまだ取り返すチャンスはいくらでもあるということ。
やがて利益が出たら利益確定して儲けたらいいわけだ。
そしてもうひとつ、ボクは積立NISAをすすめた。
これはギャンブルの真逆で、派手さはない。
でも、時間を味方につければ確実に残る。
年利6%は硬いドルコスト平均法だ。
- 仮想通貨で短期のスリルを
- 積立で長期の安心を
二本の軸をもてば、彼の衝動は破産ではなく貯蓄に向かう気がした。
経済的余裕と持続可能な事業
それからしばらくして、彼の口から「貯まってきた」という言葉が出た。
小さく笑いながら話すその姿に、以前の焦りはなかった。



副長のおかげや!
と、自分の子どもにも投資を勧めているようだ。
お金の余裕は、心の余裕をつくる。
ボクに「貸してくれ」と言うこともなくなった。
そのことが何よりうれしかった。
ところが昨夜、久しぶりに飲みに行ったとき、
グラスを傾けた彼の声は少し沈んでいた。



「元請けからの入金が止まってるんだよ」
催促をしても、「もう少し待ってほしい」と言われたそうだ。
「いつ頃?」と尋ねると、「来月か再来月とか」と濁された。
その曖昧さがいちばん堪える。
数字の上では黒字でも、通帳の中は空っぽという現実。
事業とは、そういう綱渡りの上に成り立っている。
しばらく沈黙のあと、彼がぽつりとつぶやいた。



「仮想通貨も、積立も、全部解約した」
それで支払いをまかない、なんとか倒れずに済んだらしい。



「もしあれがなかったら、たぶん詰んでたわ」
その言葉を聞いて、胸の奥がじんわりと温かくなった。
すすめていて、本当によかったと思った。
人は痛い目をみて変わる
離婚して手元の金が底をついたとき、
ボクは初めて「お金とちゃんと向き合わなきゃ」と思った。
通帳の数字が減っていくあの感覚。
あれが恐怖というものだった。
だから本を読み、動画を見て、マネーリテラシーを高めた。
当時は自分を立て直すためだけの勉強だったけれど、
その知識が、いまこうして誰かの命綱になった。
お金は、ただの数字ではない。
安心であり、選択の自由であり、支える力でもある。
そして「備え」という形で、人のつながりを守るものでもあると思う。
人生の遠回りには、意味がある。
痛みの中で得たことは、誰かを救う時に力を発揮する。
あの夜、彼の笑顔を見ながら、
遠回りも悪くなかったなと、静かに思った。
店を出ると、雨上がりの道に街灯が滲んでいた。
彼は駅へ向かいながら、「また頑張るわ」と言った。
その背中を見送りながら、
ボクは心の中で小さくうなずいた。
学んできたことが、ようやく実を結んだ気がした。








