かぼちゃの煮物

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おでん

晩飯は何を作ろうかと考えていた。といっても作れるものは限られているので、スーパーを歩きまわっても、目に付くものは限られいる。

野菜コーナーを歩いた時に、大根が100円だった。半分に切った大根で白い部分だけだったが、この安さは魅力的。

「あぁ、大根を中心に考えるか・・・」とぶつぶつ独り言を言いながら、ふろふき大根を思い出したが、腹持ちしないなと却下。息子の分も作るのだから、若い食べ盛りにもガツンと満腹感のある料理を思いつく限り考えた。

「大根、大根、大根」ってぶつぶつ言ってたら、「大根美味しいですよ。」っと店員が話しかけてきた。急な事だったので僕は愛想笑いをして、「いやぁ、大根で何を作れるかなとか考えてたんですよ」と言った。

店員は60代ぐらいだろうか、たぶん僕よりも年上だろう女性店員は、「おでん、とか?」っというので、「それ!それナイスアイデアです。」と僕は親指を立てた。

それ作れる。おでんの素が家にあったわ。

そうと決まれば大根を手に取り、たまご、すじ肉、ゴボ天、平てん、しらたきを探して、いつものごとくスーパーをあっちこっちと歩き回った。どこに何があるのかさっぱりわからない。店の中を何往復したのだろう。やっと籠の中に食材がそろったところでレジに向かった。

4000円・・・

4000円だって??? レトルトおでんを買ったほうが安上りじゃないか。なんだって4000円にもなるんだっと、「マジか・・・」っとつぶやくと、レジのお姉さんが「え?」と僕をみたので、やっぱり僕は愛想笑いをして「お金足りるかなと思って」と誤魔化した。

無意識に声にしていたので、それを聞かれて恥ずかしさもあったから、たぶん恥ずかしさを誤魔化したんだろう。

1日4000円の食費だと、つまりは30日で12万円じゃないか。先月にカードの支払いを飛ばしてしまっていたので、神経質に値段を確認していたのだけど、まさか、おでんで4000円の出費とは。

レジを出て食材をビニールに入れていると、香水の匂いをプンプンさせている僕より少し年上らしき、金髪のメッシュを入れてる女性が、買い物かごから大粒のイチゴを取り出した。あれは600円ぐらいする代物だった、ような気がする。

食べたいものを買うか・・・。たぶん残クレアルファードでも乗っているんだろうなと勝手に想像した。


遅れて受け取る

カードの明細を見ては、削れるところはないか探してたりする。僕にとっては今まで無かった習慣だけど、これをしなくちゃ毎月ハラハラするから仕方がなかった。

KONAMIスポーツクラブは解約した。kindle読み放題も解約した。日曜日も金のかかる遊びは自重している。他に何かあるかな・・・と明細を眺めては考え続けている。

マネーフォワードというソフトに、資産の見える化をしているので、削れるところといえば、もうほとんどない。それでも毎日の出費をどこで削ろうと考えている。

そういえば、別れた妻が家計の経費削減を目論んでいた時に、僕は収入を増やそうとしていた。その名残がこのブログだ。yamaosun.comという独自ドメインを取り、GoogleとAmazonにアフェリエイトの売り上げを目論み、このHPが立ち上がった。

あの頃は、妻の話も聞かず、猪突猛進に突っ走っていた。

妻が経費削減を目指した視点に、今やっと同じ視点で見る事が出来ているのか。なるほどなぁ、別れてから動き始めるんだから、タイミングが一歩も二歩も遅れているんだな。

はぁと深いため息をつく。

数字を見ていると、自分が小さくなる気がする。


投げ出さずに

おでんが出来たよっと息子にLINEを入れようとしているところに、息子がやってきた。それも作品を携えて。

「どう、見てよこれ。」と、出来上がったズボン。ちゃんとジーンズの生地で、前チャックも縫い付けてあった。

「半年かかった集大成だよ。」と、息子はくるりと回って、少しウォーキングをして、シルエットの変化を見せてくれた。

このシルエットがいいんだ・・・とか、前から見るとストレートだけど、横から見ると広がってるわけ・・・とか、友達に見せたら2万円で売ってくれと言われた・・・とか、息子は誇らしげだった。

正直、何がカッコいいのだかは僕にはわからない。

「いいね。やっと作品が完成したのか。」と僕は息子に言い、「作品に出来たというのが最高にいいわ。」と親指を立てた。最近の僕のお気に入りのジェスチャーだ。

両手で親指を立てて、「最高だ!」っと伝える、とか、カッコいいと思っている。

「投げ出さなかったよ」と息子は笑った。「だよね。よく最後まで行ったよ。」と僕も笑った。というのも、以前、三徳という居酒屋にふたりで呑みに行った時、息子は自分の短所を僕に話していた。

「構造を理解してしまったら、面白くなくなるんだよね。」身振り手振りでズボンの形を説明して、「股下のところがいまいちわかんないんだけどさ」と話し続けて、作り続けて構造がわかって来た・・・とか、構造が分かれば、単純な作業だ・・・とか、単純な作業がつまらない・・・とか、話しているのを聞いて、僕は思った。息子は、根っから、わからない事に身を置くことに、愉しみを見出すんだなと。

だから飽きが早いのか・・・


創作し続ける

Youtube動画はもう半年ほどアップしていない。創作活動よりも、どこで何を削ろうかと考えるほうが忙しいし、自分との対話のほうが、今は実になるし面白い。

それにブログを書いているほうがお金を使わなくて済む。このブログも立派な創作活動だけど、お金のかからない創作活動だ。自分の内から生み出すから。

「しっかし、お前は遊んでいるようで、しっかり創作してたんだな。」と安心した。

「エネルギーなんだよね。ぎゅっとして、パッと出す感じ」と、息子らしい、いつもの抽象語を話していたが、僕はなんとなくわかった。創作活動する人は、自分の内から産みだすから、ある程度いくと空っぽになる。

「ぎゅっとして、パッですか」と笑った。

僕も生活費を削ろうとして、自分で料理をする頻度が増えてきた。そして丁寧に作れば、店よりも美味しい事も、立派な創作活動だという事も体験できてきた。

僕は削るために、料理を創る。

息子は、ひたすら創る。

そして自分のペースで創れる場所を求めて、僕のマンションの一室にアトリエを設けた。自分の世界であるアトリエに籠って、ついにズボンを完成させた。


美味しかったよ

別れた妻の料理は旨かった。ラザニアに、ほうれん草とベーコンの厚揚げに、そして、僕が彼女の料理を初めて口にしたのは、かぼちゃの煮付けだった。タッパーに入ったそれは、そりゃぁ旨かった。

僕は、妻から一歩も二歩も遅れて、経費を削ろうとしていた視点に立ったし、それに料理を創作活動として丁寧に作る事も覚えてきた。役割で生きるよりも、私たちの生き方を追い求めてもいたな。実際に、僕はそういう生き方になったからな。いろいろ想い出す。

「おかわりあるけど食べる?」と言うと、「いや、もういい。腹8分目が一番いいんだ。」と息子は言った。息子の皿は空っぽになっていた。

「ありがとう。美味しかったよ。それじゃ」と手をあげて、息子は自分のアトリエに帰っていった。

彼の食べた空の皿だけが置かれている。僕の創作は無くなってしまったが、半年かけたズボンは、息子が履いている。

想い出しながら、僕は心底気持ちが楽になった。

なにか、ここから始まりそうな気がして、嬉しかった。

「美味しかったよ」と言われた事も、嬉しかった。

王立宇宙軍 オネアミスの翼


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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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