同じ場所に立っているはずなのに、
見える景色が、前とは少し違っていた。
6年ぶりのクリスマス音楽会
今日はクリスマス音楽会について話すよ。
デイサービス開設から毎年クリスマス音楽会を開催してたよね。
主旨としてはクリスマス会というよりは音楽会。
ここがこだわり。
声楽隊を率いるセミプロの人たちがピアノやフルートで空気を音符で彩る。
デイサービスで行う音楽会としてはきらびやかすぎる。
2000円と書かれたチケットがあっても不思議じゃないくらい。
だから僕は肩に力がはいっていたよ。
それが新型コロナの影響で中断していたんだ。
最後に開催したのは2019年。
この年は僕は君を失って眠れない時で
なにかを始めようとしても自然と手が止まってしまって
そのまま時間だけ過ぎてゆく毎日だったんだよ。
自分の4割ぐらいでしか動けず、
この大きなイベントに対して気持ちが前に出てこず
ただ静かに準備をしていたよ。
当時のリーダーはいちスタッフと同じで、
僕がチームを動かさなくちゃいけなかったんだけど、
大事かどうかを測る前に、力が抜けてしまう感じがしんどくて、
やっとのこと終えたクリスマス音楽会だったよ。
この時の動画がYoutubeにアップしてる。
今、観ていても僕のからっぽさが透けてみえるよ。
ちょっと観たけど笑えていないね。
そしてゲッソリ痩せている。
君を失って4か月目ぐらいか。
よく頑張ったな(笑)
【Vlog】20191218@クリスマス音楽会を控えて忙しい一日
【Vlog】20191219@クリスマス音楽会でプチパニックの巻
たぶん君は知らないだろうけど、
当時の僕のYoutubeは君に対しての語り掛けの場だったんだよ。
・わかってほしい
・誤解を解きたい
・変わった自分を見てほしい
ただそれだけの語り掛けは、君にとって圧になっていたろう。
こんな動画は非公開しといたほうがいいな。
でも、こんな醜態も僕の物語の欠片なのさ。
思い返しているとあの小さな僕を懐かしく感じるよ。
舞台裏の歪み
このクリスマス音楽会。
実際の裏方作業はかなり神経を擦り減らすイベントだったよね。
それは運営の方針をもつ勢力が、組織の中でふたつあったから。
ひとつはこれに僕も君も属していたけど、デイ利用者さんを喜ばせようとする勢力。もうひとつはセミプロと呼ばれる先生方を接待する勢力。
このふたつの勢力が全くといっていいほど噛み合わない。
誰のための音楽会なのか?
いくら説明と言葉を積み上げても
その上をすり抜けていくようで、
手応えだけが残らない。
接待も大切なんだけど、現場の流れをいちいち止められてしまうもどかしさ。振り回される僕らは無駄に疲弊していったんだ。終わった時は達成感もなく、ただただ疲れた・・・やっと終わったと肩を落としていたね。
だから毎年この時期になると憂鬱になった。
またこの季節がやってきたよ・・・っと。
今年の現場は違う
ただ、今回2025年の6年ぶりの開催は少し違うよ。
現場に、ひとつ芯が通ったような感覚で、誰かが頑張っているというより、ちゃんと支えがある、という感じに近いかな。そんなリーダーが僕の隣にいるんだよ。しかも呼吸が合うのがいい。
そして接待の勢力も単純に人数が減ったかな。特別な出来事があったわけじゃない。ただ、同じ調子のまま進んで、
静かに、持ちこたえられなくなったというところかな。
そしてこれが一番大切な事だけど僕自身が輪郭をしっかり持っているということ。誰かの気配に寄りすぎず、自分の呼吸を保ったまま動けるのが大きいかな。
この3つが2019年までと違うところ。
だから一味違うんだよ(にやり
今のリーダーと同じ方向を見るまでに、何度か足並みを揃え直す時間があったんだよ。
その積み重ねが、今の落ち着きにつながっている気がするよ。
それが出来たのも僕がちゃんと僕である輪郭を形作っていたからこそだと思う。
自分の輪郭が出来ると、相手の輪郭もわかってくるんだ。
自分の輪郭がはっきりしてくると、
相手との距離も、無理なく測れるようになる。
今はもう、
それぞれが安心できる距離を、
大切にしているだけだよ。
話を戻すね。
これでリーダーと僕のふたりで現場を担う体制が生まれて、そしていつもなら僕が開催の挨拶したけど、今回は彼女にしてもらったよ。
君がいたならたぶん僕に言ってくれるんだろう。いや、ずっと言ってくれていたっけ。
- 前に出すぎちゃダメだよ。
- すべてをしようと背負いこまないで。
- 周りを頼っていいんだよ。
それが今は自然に出来るんだよ。
線を引くこと
クリスマス音楽会の当日。
現場をしっかり回す事が僕とリーダーの役目。
通常業務をまわらなければ、クリスマス音楽会まではいけない。
そこへいつものように母親が現場に絡んでくる。
会場の椅子を見て欲しいときたので、
一緒に行ってみるとデイ利用者の席が変更されている。
また勝手にいじったわけだ。
現場目線でトイレの近くにデイ利用者の席を確保していたのに変更されている。
だから僕は黙ってそれを修正する。
また出演者の接待の事でいろいろ相談を受けたが、
それは母親に任せる事で僕は割り切った。
接待まで手を回そうとすると
現場に僕がいなくなるので、他のスタッフに負担をかける。
そもそも母親とこうして話している間にも、
時間は刻々と過ぎて言っているわけだから、やっぱり現場業務に支障が出る。
だから僕は課題の分離を行い、
接待の話は一切かかわらなかった。
母親は怒っていたが、怒るのも彼女の自由だよね。
僕には関係ない。これは感情の話じゃないんだから。
互いの役割の話だよ。
他人の役割まで引き受けてしまって余裕を失うような事があれば、どこかでミスが出る。
だから僕は母親との間にキッチリ線を引いたんだ。
無理な役割を背負いこまないためにね。
そして他人の感情に振り回されないこともね。
滞りのないクリスマス音楽会
朝の送迎から始まり、午前中の入浴を終えて、昼ご飯を提供して12:00になる。そこからトイレ誘導を済ませて12:30には車いすの利用者から誘導を開始する。難聴の利用者を前の席へ案内し、車いすの利用者はトイレの近い後ろの席へ。すべての利用者を誘導し終わったところで、地域の人がちらほらと来場してきた。席に誘導しながらプログラムと歌詞カードを配る。
ここまでは順調だ。
手を止めずに、場の動きを追っている。
今はまだ、余裕を残していけそうだ。
ある程度目途がたってきたので
余裕のあるうちに出演者に挨拶にまわる。
それから会場のチェックを。
ふと、空気の乾きに意識が向いた。
目立たないけれど、見過ごさないほうがいい気がした。
出演者にとって空気の乾きはキツイだろうなと思ったんだ。
加湿器を3台もってきてフル稼働の急加湿。
僕が冷静に会場の環境を整えているあいだ
リーダーはしっかり他のスタッフに
指示を出して現場のまとめているのが視界に入った。
場の足元が安定している感じがあって、
心を張りつめる必要がなかった。
静かに、呼吸が整っていった。
カメラの用意と、マイクの設置を済ませて、
そしてリーダーが上手に開催の挨拶をしてクリスマス音楽会が始まった。
静かな余韻
クリスマス音楽会は大いに盛り上がったよ。
拍手喝さいで、利用者さんも涙を流すほどだったよ。
地域の人たちもセミプロの声量に圧倒されていたようだった。
プログラムが最後を迎え、
挨拶をして来年の開催をまた約束して終えたんだ。
そこから利用者はデイルームへ誘導されてゆき
通常のデイの流れに戻ってゆく。
特別な事といったら
クリスマスプレゼントを渡すサプライズがあるくらい。
すべて万事順調で終わったよ。
利用者さんを見送って、
今年の音楽会は、静かに幕を下ろした。
「やり切った」という言葉より、
ちゃんと終われた、という感覚のほうが近いかな。
今日のクリスマス音楽会を通じて、
以前とは違う立ち方をしていたことを、
あとになって実感したよ。
そんな話を、君と並んでできたらよかったな、と思ったよ。
おやすみ。
