どこにいる?
火曜日からの日勤に続き、
夜勤からの水曜日の日勤を終えるところだった。
こんな無茶な勤務も僕が独り身だからできる事だ。
世界は少し色あせて見えていて
思考も輪郭も少しづつぼやけてきた最中
息子からline電話が入った。
「どこにいる?」
彼から電話なんてめずらしいが、
それ以上に、なんだか慌てているようだった。
だから僕は理由も聞かず、最短で会える時間を言った。
たぶん明日ではダメなんだろう。
この瞬間にしか意味をもたいない話があるんだろう。
そう思いながら少し僕は急ぎはじめた。
同時に息子の熱に巻き込まれないブレーキも踏みながら、
俯瞰であろうとたしなめた。
ミームコインとは何か?
時計は16:00をさしていた。
僕と息子はスマホを片手に、パソコンを叩いていた。
「つまりね。ミームというのは昨日始まって、これから盛り上がりを見せるんだよ」と息子は早口で僕に説明した。なるほどと僕は頷いてはいたが、息子の話す事が全くわからなかった。
これはメダカだよと言われて頷く人は多いけど、食べれるんだとか言われたら、たぶんほとんどの人は眉をひそめると思う。息子の話す事はわかるけど、実用性のないものになぜ値が付くのかがわからない。一気に急騰して急落して使い捨てされるミームコインにどんな価値があるのか?
僕は眉をひそめていた。
ただ、息子の話を聞いていると、どうやら金儲けの話ではなく、彼の興味は違うところにあった。物の価値はどうやって決められるのか?とか、価値とは何によって生まれるのか?などに好奇心を持っているようだった。
彼がいつものように、身振り手振りで僕に向かって「あのね。参加するもんじゃないんだよこれ。創造する側にいなくちゃダメってこと。わかる?」と、いつも何を考えているのかわからないひょうひょうとした表情は影をひそめ、今日は珍しく目を見開いて話し続けていた。まるでカブトムシでも見つけたかのような熱が立ち上がっていた。
あぁ、生きてるなぁと思った。
構造理解
息子の興味はわかったけど、僕は、構造的に理解できないと安心が訪れない性質のため、僕は僕で調べたら、するとミームをつくるにはコストがかかり、そのコストはソラナコインなんだそうだ。
「ははぁ。なるほど」とパソコンから手を放し、背もたれに体を預けた。
息子は「参加するもんじゃないんだよ。創造する側にいなくちゃダメ。」だと言ったけど、ミームコインを作りたいとわけだ。それにはソラナコインがないので創造出来ないという課題があり、そして「ミーム日本上陸」と情報を目にして、今この瞬間に波が生まれようとしているのにソラナが無いので機会損失するという焦りがあり、そしてこの流れに乗る事で「価値は何から生まれてくるのか?」という息子の好奇心を燃やせるのに、指をくわえてみているしかないわけなんだな。
やっと乱雑に散らかった情報に、構造的に理解が追いついた。
「仕組み」が見えない
しかし、わからないのは、ミームという実用性のないものに、なぜそれほどにも価格が付くのだろう。
昔、たまごっちが爆発的なブームになったけど、あれと良く似ているのかもしれない。単なるおもちゃとしても面白くもなんともなかったけど、周囲がたまごっちと騒げば欲しくなるという群衆心理?
しかも、ミームに関しては形がない。形のないものに、そこまで熱狂が生まれてくる?
僕はこの構造がわからなすぎて気持ち悪さを感じていたけど、ただ、息子はわからなさの中に身を置くことを恐れないようで、まるで海が急に沸騰しだしたかのように見える現象を観察して楽しんでいるふしがあった。
息子の熱中と、父の引き際
で、僕の結論は、投資する価値があるなと思った。ミームではなくて、息子の知的実験に投資をしてやろうと思った。どこで火がついて、どこで終わるのか。群集心理な熱狂をどう観察して自分の力に変えていくのか?僕の興味は息子そのものだった。
僕はスマホを取り出し、アプリをインストールしてアカウントをつくり息子と同じ環境を作った。地図をひらけば、僕は行動が速い。ウダウダ悩む時間が長いけど、決めたらとことん行く。とりあえずやってみる。やってみてから考える。
僕もプレイヤーにならないと息子への投資は出来ないとわかってきたので、息子と同じ環境を作り、そこからソラナを買い、息子に送信する。同じアプリなら送信は簡単だ。これで息子への初期投資は終わった。
あとは息子次第。
しかし、これを君が見ればどう思うだろう。
「ケガしても身で感じて学べ」と子どもたちに接していた君のことだから、背中を押すのだろうか?それとも、自転車の運転は必ず先頭を走り、子どもたちの道に危険がないかを確認していたように、未知なる危険があるところには近づくなと警笛を鳴らすのだろうか?
いつだって君は
危険を把握したうえでやってこいと背中を押していたし
未知なる危険には、自らが危険を引き受けていた
頭があがらないよ。
「余白」という関わり方
それから僕は疲れがたまっていたので、いったん寝る事にした。ただでさえ疲れて世界の輪郭がぼやけているところに、息子の熱に触れたのでもう思考力がない。
いつ寝たのか覚えていない。気がついたら布団の中にいた。時計の針は4:00を差している。風呂も入っていなかったし、天井のシミが形を変えていたが、だんだんと部屋の輪郭がハッキリしてきたので、ブログを書いている。
ミームか・・・。
アプリを立ち上げプレイヤーとして眺めてはいるが、ひととおり触ってはみたが、僕にはなかなか攻略法が見えてこなかった。そして息子からlineが入っていた。
なにか閃いたものがあったようだ。
一時的に息子の世界に同行したが、スマホを眺めていて、やっぱり僕にはわからない世界だと思った。だから僕はプレイヤーを降りる。ただ息子からすれば否定されずに僕が一時でも並走したわけなので、僕の立ち位置だけは伝えられたかなと。
言葉ではなくて、行動で伝えられるものもあるから、あとは息子がどう感じるかは僕の領域じゃないし、そっと余白は残しておこうと思う。
君に怒られるだろうな
今回のことで、やっぱり僕は思うのだけど、今の息子は、おそらく「世界のしくみを読む」ということに好奇心をもっていて、頭で理解するというよりは、感性を使って体で感じるタイプなので、経験が一番の成長なんだろうなと思う。
親としては(親らしい事はなにも今までしてこなかったが)息子の歩みを止めず、そして息子に巻き込まれずの距離感はもっていたいなと思う。
ミームというわけのわからんものに熱狂が生まれていて、それがこれから波となり流行りとなる前の世界でいて、熱狂から価値が生まれてゆく。
息子がチャレンジするのは、価値を生み出す側でどう仕掛けるのか?だろう。
ここに「真面目に生きろ」といった価値観は、彼の輪郭を壊してしまうのかもしれない。そういう僕を君は「それでも父親なの?」と、たぶん叱るのだろうと思う。
僕は僕で、正解を与えられない場で思考し続けていると、だんだんと自分が納得する道を選び始めるんだよ。息子へどうサポートするのが正しいかなんてわからない。じゃぁ、線をちゃんと引いておくほうがいいと考えたんだ。
それぞれの道があるのだから。
