呼吸の場所

暴力をやめるとは、行動を変えることだけではない。
もう一度、自分の呼吸を取り戻すことだった。

呼吸の場所

6年という時間が流れた。
そのあいだに、いくつもの怒りや悲しみが、
波のように押しては引いていった。

かつての僕は、
どうにか自分を守ろうとして、
相手を言葉で、態度で、押し返していた。
それが暴力の形だった。

「自分が正しい」と信じることで、
不安を見えなくしていたのだと思う。

けれど、あの痛みをくぐり抜けてから、
少しずつ見えてきた。
暴力とは、他人を壊すことではなく、
自分の無力さに耐えられない心の動きなのだと。

暴力は、被害と加害のバトンをつないでいく。
どこかで、その輪を断ち切らなければならない。

それはいったん、自分を否定することから始まった。
これまでの価値観をひとつずつ見つめ、
暴力につながるものを手放していった。
そして、暴力以外の選択肢があると知ったとき、
目の前に、穏やかな海が広がっていた。

壊したかったのは、相手ではなく、
どうにもならない自分の弱さだった。
その弱さは、もういない。

学び、書き、向き合ううちに、
“選び直せる瞬間”があることを知った。
怒りの波が立ち上がるたびに、
一度深く呼吸をして、
静けさを選ぶ。
それを繰り返すうちに、
少しずつ景色が変わっていった。

ときには、暴力から距離をとり、
タイムアウトで頭を冷やし、
相手と自分の境界線を引く。
自分の力ではどうしようもないことを受け入れる器をつくった。
そして、「信じる」という尊厳を身につけた。

誰かを変えられないことに苦しむよりも、
できることを知り、
自分を整え、穏やかでいられること。
それが、いちばん確かな希望だった。

今でも、ときどき心は揺れる。
それでも、もう暴力を選ばない。
支配ではなく、信じる力を。
正しさではなく、共感の力を。
そのほうへと歩く。

ライカー副長

それでいいと思う・・・

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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