カレーライス

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荒れ模様の日曜日

外がなんだか騒がしかった。時折、バンッと打ち付けるような突風が吹いていた。ベランダの日よけがバタバタと暴れまわっている。

今日は日曜日だ。9時頃に起きたが、あまりの荒れ模様の天気に、今日はのんびり家で過ごす事になるなと思った。こんな日に出かける事はない。読書でもしようと思う。

読みかけの江國香織の「号泣する準備はできていた」の続きが気になる。短編集だけど、感情を風景として置く文章表現が胸を打つ。

読んでいると、胸が締め付けられたり、ホッとしたり、モヤモヤが立ち上がったりと、言葉に没入してゆく。僕は江國香織の文章が好きだ。


カレー

どうせ、今日一日、家にいるし、読書と部屋の片づけ以外に、なにか出来る事がないかと考えていたら、腹がぐぅと鳴った。そういえば朝メシがまだだったが、時計の針はもう11時を回っていた。

そうだな。今日は米を丁寧に炊いて、それに合うおかずを丁寧に作ろう、と思い立ち、カレーにしようと思い立った。僕が学生の頃、難波駅にインドカレーのお店があった。そこのチキンカレーがとても旨くて、足げに通った店だったが、もうなくなってしまっている。

そこのカレーは、余分な具材は入っていなくて、ルーがしゃぶしゃぶだった。最高に旨いカレーだったので、僕のカレー基準は、とろみのないしゃぶしゃぶカレーになった。

よし、あのしゃぶしゃぶカレーを再現しようと思い、買い物に出かける事にした。


見慣れぬ風景

外に出ると綿のような雪が風に舞っていた。アスファルトが白くなり、見慣れない風景が広がっている。風を真正面から受けて、顔に雪があたる。なんだかワクワクした。

吹き付ける雪を避けてフードをかぶった。

遠くのほうで救急車が走っているようで、ピーポーピーポーと聞こえている。雪がアスファルトを白く染めているから車の挙動はいつもと違うだろう、日曜日だから運転し慣れていない人も車で出かけているだろう。

こんな日は車で移動するのは危ないと思ったから、歩いていける近くの安売りスーパーに行く事にした。


安売りスーパー

店内に入ると思ったよりも人が多い。この寒波でみんな近くで買い物を済ませているんだろうか?考える事は一緒だなと感じた。レジのほうを見ると、警察官の高尾(仮名)さんが支払いの最中だった。祭りで良く一緒に飲みに行ったが、話がくどすぎて胸やけする。ここで声を掛けると時間をとられそうだと思ったので、気づかれないうちに、そっとスーパーの奥へ移動した。

スーパーの突き当りに野菜コーナーがあり、小ぶりのたまねぎをひとつ手に取る。そして鶏肉コーナーに行こうと思った時に、小太りの色黒の客の耳が気になった。耳にこれでもかという数のピアスをしている。それを見た時、キャラが濃そうだなと思った。それに耳がかゆい時にどうやって掻くんだろうとも。わからないものをを避けながら、このピアス客を遠巻きに移動して鶏肉を手に取った。

安売りスーパーにこんなに客が入っているということは、物価が上がって、みんな遊ぶ余裕がないんだろうなと勝手に思った。昨夜、佐藤さんに連れられて、イオン内に牡蛎小屋が期間限定で開催しているBBQ店に行ったが、エビ1匹400円もしたし、牡蛎も籠もりで1200円した。結局、3人で割ると6500円ぐらい払ったわけだけど、たぶん、もう行かない。

あの牡蛎小屋に行ったら、しばらく家でゲーム生活になりそうだ。


カレーの歴史

昼飯になるはずのカレーが目指すところは、難波駅にあったインドカレーのチキンカレー。実際は、当時イギリスに植民地化されていたインド。このスパイスが、イギリスに持ち込まれてイギリスカレーになった。イギリスカレーが日本海軍の食事に採用されて海軍カレーになる。今でも金曜日は自衛隊でカレーだそうだ。

普段、食べるとろみのあるカレーは、スープ文化のフランスに渡ったカレーだ。当時は食用カエルが入っていたそうだが、この話をしても誰も信じてくれない。

今日作ろうと思っているのは、海軍カレーと称したイギリスカレーを作ろうと思っている。とろみのないしゃぶしゃぶのカレーだ。


海軍カレー

とろみのないしゃぶしゃぶカレーを作るとなれば、「S&Bゴールデンカレー辛口」のパッケージ裏に書いてある作り方から外れる事になる。

750mlの水に、ルウ1パックと書いてあるが、そのまますればとろみがついてしまう。だからルウ2/3に減らす事にして、それだと味が薄くなるかもしれないので、いつものあご出汁で塩味を追加することにした。

あくまでも、イギリスカレーだ。しゃぶしゃぶのカレーでなければ、今日の僕の理想の目的地には行けない。


スープカレー

油をひきカンカンに熱くなったフライパンに、鶏肉を入れた。パチパチパチっと気持ちの良い油のはねる音がする。この瞬間がたまらない。単なる肉の塊が、食べものに変わってゆく。

こぶりの玉ねぎを短冊切りにして、鶏肉が暴れている中に入れると、また鍋の香りが違ってくる。音も若干変わり、ササっと玉ねぎを炒めてゆく。

あまり炒めすぎない頃合いを見て、水を750mlを注ぎ入れると、静かになり、しばらくすると沸騰してきて、また騒がしくなる。灰汁が火口のマグマの流れのように渦巻いているのを、具材がキレイに見えるまで、おたまで取り除く。

そこにあご出汁パックを投入して、しばらく中火で煮込んでゆく。蓋を開けると、ふわっと蒸気と共に良い香りが立ち上がり、もうこの時点でよだれが出てくる。

この瞬間に、料理は芸術だなっと思う。

さぁ、カレールウを少なめに投入して、おたまでかき混ぜて煮込む。とろみが出ないように慎重に。ある程度はとろみは出て欲しいが、いくらかき混ぜて煮込んでいっても、適度なとろみが出てこない。

ん?おかしいな・・・と感じる。

しゃぶしゃぶカレーといっても、これじゃぁカレー味の鍋みたいで、適度なとろみは欲しい。だけど、いっこうにカレー鍋だ。おかしいな。イメージどおりにならないぞ。

いつものように、ここから理想から脱線してゆく。

イメージどおりにならないので、これは理想のカレーは諦めたほうがいいだろうと思った。たぶん、追い求めて、いろいろしちゃうと、もっと悲惨な光景が広がりそうだった。

だから、考え方を変える事にした。これはイギリスカレーではなくて、大泉洋が推している北海道名物のスープカレーだと思う事にした。

だとしたら、ごはんの上にはかけない。スープカレーは、カレーとごはんを分けて食うので、そう配膳したほうが良さそうだ。たぶん、きっと、そっちのほうが見た目もスープカレーだろう。

さぁ、今日のメニューは「チキンスープカレー」だ。


スパゲッティ

僕がまだ結婚している頃、妻が調子を崩した事があった。今日みたいな日曜日の朝だった。頭痛があったらしく、ずっと寝ているものだから、「ごはん作るから、寝ときなよ」と僕が言うと、妻は「ごめんねー」と言った。

スパゲッティーを作ろうと思った。どうやって調理したのか記憶も薄れているのだけど、とにかく炒めたりしたんじゃなかっただろうか。

スパゲッティーは麺を茹でて、茹で汁でスープを作り、麺と和えるといった感じだけど、たぶん炒めて味付けしたんじゃないかと思う。出来上がった料理は、想像を絶するものだったに違いない。

その話を聞いた当時のスタッフは、妻に言った。「風邪で寝込んだ時に、主任に不味いもの食べさせられてかわいそう」と。どんな状況でそれを妻に言ったかは、今となっては知る由もないが、今、考えてもそれはそうだと納得する。

だけど、妻は僕に向かって「スタッフさんは、あんなこと言ってたけど、私は嬉しかったよ。」っと。

あの意味が未だにわからない。

なにが嬉しいんだろう。不味い物を食わされて嬉しい訳はないので、あの一言には優しさ、思いやり、いろんな意味が入っていたんだろう。今では計り知れないが。

僕はイメージ通りにいかなかった、僕のスープカレーを食べて、そんな事を想い出していた。

.

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不味い・・・

とんでもないものを作ってしまった・・・

みかんで口直しをしよう。

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.

僕は、いつも正しい形や、理想の形には、辿り着けない。

だから僕なりの形を探す。

変人には変人の生き方しか出来ないんだわ。


曇天

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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