夜勤明けの日勤は、どうしても体にこたえる。
眠いというより、意識の輪郭が少し曖昧になるような感覚。
昼からの予定を見ていると、休む時間は見当たらなかった。
それでも、ふと空いた15分。
風呂に入ろうかと思ったけれど、
今は体を横にしたほうがいい気がして、スマホでタイマーをかけた。
ライカー副長15分だけ。
ほんの少しの眠りだったけれど、目覚めると頭が軽くなっていた。
短い時間でも、人はこうして整うことがある。
もうひと踏ん張りと終わりが見え始めた頃に電話が鳴った。
落とし物の知らせだった。
車のカギと給油のカードを、どこかで落としていたらしい。
「受け取りは平日の17時までです」と言われて、
小さくため息をつく。
時間の余裕はどこにもない。
それでも今日できることは、今日のうちに。
明日の自分を少しでも軽くするために、落とし物の受け取りは今日やっておきたかった。
片道30分かかる落とした市町村の警察署へ向かった。
帰り道の夕暮れは、思ったより静かだった。
行き交う人の姿を見ながら、
誰もがそれぞれの荷物を抱えて生きているのだと思う。
仕事が終わるころには、
「今日もよく動いたな」と小さくつぶやく。
そう思えるだけで、心が少し落ち着く。
やっとのことで帰社して、部下と申し送りの確認や明日の仕事の段取りで時間が過ぎていった。
残業もほどほどにしたかったが、もう19時をまわりさすがに終わろうと提案。
「おつかれさま」と声を掛け合った。
それだけのやりとりが、不思議と温かい。
それぞれが、それぞれの場所で頑張っている。
そんなふうに感じられるだけで、救われることがある。
日々は静かに過ぎていく。
正しさを求めるよりも、
いま目の前にある穏やかさを大切にしたいと思う。
疲れている。
けれど、今日を越えられた。
その小さな実感が、今の支えになっている。








