京都で写活の日曜日

それぞれが それぞれの場所で
静かに 歩き続けている

目次

それぞれの選択

11月の風が、そっと温度を変えていました。
空はどこか透き通っていて、冬の気配が遠くに浮かんでいるようでした。
この日は本来、息子と徳島の剣山へ向かうはずでしたが、流れは静かに別の方向へ動きました。
それぞれが、それぞれの場所で日曜日を過ごすことになったのです。

息子は、最近お気に入りになった登山靴で街を歩いています。
靴底から伝わる感覚が普段と違うらしく、その小さな違いが心地よいようでした。

息子は登山を楽しみにしていたようですが、この日は工業用ミシンを見に行く選択をしました。
倒産した工場からデニムを縫える中古のミシンが出ると聞き、
「自分の手で確かめたい」という気持ちが動いたのだそうです。

少しづつ自分の夢をカタチに行動しています。


歩くことで整っていくもの

予定が空いた日曜日、どう過ごそうかとしばらく考え、
気づけば「歩こう」と思っていました。
6年前、心が散らかっていた時期にも、山を歩きながら
自分と向き合う静かな時間を積み重ねていたのを思い出します。

歩くという単純な動きは、心にゆるやかな余白を作ります。
鴨川沿いに車を停め、川下から川上へと祇園の方へ歩きました。

冷たい風と、やわらかな陽の光。

観光地に近づくほど人の気配が増え、一眼レフのシャッターが淡く鳴りました。
この日は、カメラがそっと心の奥を受け止めてくれていたように思います。


親子が見る景色の変化

歩きながら、息子が話してくれた“思考の層”の話を思い返していました。
人には、感情で受け取る層や、構造で理解する層、
そして俯瞰して眺める層がある、と。

息子は小学生の頃から、物事を構造で理解するところがあったようです。
友達との会話が噛み合わなかったこと。
中学、高校と進むにつれ、同じ速度で考える仲間が少なかったこと。
その中で、ネットの世界に気の合う友人を見つけていったこと。
そんな話を、最近になってようやく聞かせてくれるようになりました。

僕はどちらかといえば、経験からゆっくり深く掘るタイプ。
息子は、俯瞰して理解する速さを持っている。
方向が違うだけで、どちらが優れているという話ではありません。
ただ、かつては互いの見ている景色があまりに違っていました。
今は、その距離が少しずつ近づいているのを感じます。


父として、そっと意識していること

息子の中では確かな変化が起きています。
チャットGPTのような“思考の鏡”を手にしたことで、
自分の考えを整える速度がぐっと上がったようです。

ただ、頭の中で起きている変化と、
行動として表れる変化には、ときどきズレがあります。
だからこそ、僕自身が気をつけているいくつかのことを、
鴨川のほとりを歩きながら、改めて考え言葉にしていました。

  • 急かさないこと。
  • 正論を重ねないこと。
  • 期待を背負わせないこと。
  • 心の奥に入りすぎないこと。
  • 悟った父親にならないこと。
  • 小さな行動を否定しないこと。
  • 自分の成功の型を押しつけないこと。

どれも特別なことではなく、
ただ息子の歩く速度に合わせるための姿勢です。

父の言葉は、時に余計な重さを持ちます。
その重さで、せっかく芽生えた火花を消さないように。
そんなことを、いつも心のどこかで確かめています。


小さな祈り

歩いているうちに八坂神社へ着きました。
人の流れの向こうで、木々が静かに揺れていました。
家族がそれぞれの場所で、無理なく暮らしていけるようにと、
ただ淡く祈りました。

そのあと「奥丹」で湯豆腐をいただき、
縁側から庭を眺めながら、
体の奥がゆっくりほどけていくような感覚がありました。

昔から「遅咲きだね」と言われることがありましたが、
最近はその言葉の意味を少しだけ受け取れるようになってきました。

思考や感情の輪郭が、
ようやく整い始めてきたのを感じるからです。

息子も、僕も、
それぞれの速度で変わっていく。

その歩みを急かさず、比べず、
ただ静かな時間の中で育てていきたいと思います。

京都の道を歩きながら、
そんなことを考えていました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

目次