同じ景色を見て見守るということ

親子という形を越えて
同じ時代を見つめる ふたりの旅。

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Z世代の考え

息子とご飯を食べに行く車の中で、ふと彼が話し出しました。

息子

「今の時代って、つまらないよね」

その言葉を聞くのは、一度や二度ではありません。
昭和の時代に生まれたかった、とも言います。

なんで?と尋ねると、

息子

「なんか面白そうだ」

と笑っていいました。

世代の価値観からの脱却

ひとことで印象を語る息子は、
その行間を僕の問いで埋めていく。
何度かの問答の末に、
彼の考えが少しずつ形をもって現れてくる。

息子の輪郭は、まるで化石を掘り出すように少しずつ見えてくるもので、
彼が自分で思っていることを言葉にしてゆくのを、
そっと手伝うような時間です。

昭和の急激な経済成長の裏にある混沌。
そのカオスが、彼には宝箱のように映るらしい。
Z世代として生きる彼には、
ホワイトな社会のルール、経済の停滞、未来の不透明さが
重たくのしかかっているようです。

だから、

息子

「何をやったところで無駄だよね」

なんて言葉が出てくることもある。

それでも彼は、留学で出会った韓国の友人に誘われ、
服作りという道に目覚めました。
部屋にこもり、静かに、でも確かに、
服作りに没頭しています。

楽しそうなんです。
それが、いまの彼の日常。

親の不安

ふと、思う。
この見守り方でいいのだろうか、と。

彼が向き合っているのは、結果の見えないもの。
作品はまだ完成していないし、発信もされていない。
生産性も、金銭的な成果もない。

このまま、彼は服で生きていけるのだろうか。
今はまだ、根を張っている段階。
それを理解していても、不安はときどき顔を出す。

それでも息子と対話を重ねるたび、
僕は少し落ち着きを取り戻します。
「好きなことをやっている。情熱を持って取り組んでいる」
そう思い直して、信じて見守ろうと、また決意するのです。

けれど、しばらくすると、また揺らぎます。
これでいいのか、と。

だから、定期的に対話を続けることが大切なんだと思う。
それは、彼のためであると同時に、僕自身のためでもある。

もう、何かを教えるというより、
同じ速度で、同じ景色を見ながら考えている。
息子と共に悩み、今の時代を歩いている感覚です。
共にこの時代に生まれてきた、ひとりの同志のような。
言葉にしづらいけれど、そんな関係が近い気がします。

新しい価値

たとえば今の時代。
組織ではなく、個人にお金が流れる構造になってきています。
個人の力、発信力、創造力、そしてAIを使いこなす知恵。
それがある者と、ない者の間には、深い谷ができている。

だからこそ、僕は彼に言います。
「個人力を身につけろ」と。

大学に行って就職するサラリーマン。
この時代における個人力を活かすフリーランス。
どこに正解があるのだろう。

Xでも頻繁に見かけますが、
個人が発信する世界では、事実はひとつではありません。
そこに見えるものは、正しさよりも、
向き合い方の温度が問われる時代になってきている。

思えば、昭和の時代に生まれた僕にとっては、
同調圧力や村社会の窮屈さが当たり前でした。
だから個人の価値観よりも社会の常識が優先された。

でも今は違う。
個にスポットライトが当たり、情報は誰でも検索できる。
知識を組み合わせて使える人が、自由を広げていく。
村の常識はもう通用しない。
個人が何を成せるか——
そんな新しい価値が生まれている。

小学校の文化祭で、紙飛行機を飛ばす競技がありました。
息子は一般的な紙飛行機の折り方で飛ばすという事をせず
鋭利に折った紙飛行機を槍のように投げて一位を取りました。

あの自由な発想と知恵を思い出した時に
この時代の風に、彼は案外フィットしているのかもしれないと感じました。

息子を信じる

親バカかもしれませんが、
頭の回転が速く、機転も利き、個性もあって、人に好かれる。
そんな彼の資質が、この風の強い時代を、
追い風に変えてくれるのではないか。

それは信じて待つという、覚悟の上の期待です。

僕自身もまた、答えのない問いを、
ずっと考え続けています。

正解のない時代に、どんな問いを立て、
社会をどう見ていくのか。

考えることをやめた瞬間に、
立ち止まってしまうような気がするから。

だから、問い続けます。

そして今日もまた、息子と並んで、
同じ景色を見つめては、不安をかき消し、前を向いて歩いています。

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この記事を書いた人

福祉事業の経営をしてます。①小規模多機能のケアマネ②現場の介助③厨房で料理作り④体操教室など地域ボランティアをしています。
「やってみる」を軸に人生の幅を広げます。ウインドサーフィン・登山・カメラ・バイクはSV650・競馬・FX・株式投資・投資信託などなど。体験を記事にしています。

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