海へ向かう朝は胸が高鳴っていました。予報は風速7メートル。今日はウインドサーフィン日和だと思ってバイクを走らせました。
ところが現地に着くと、海は鏡のように静か。
旗はなびかず、ヤシの木も垂れ下がっているという状況。思わず「え?」と肩の力が抜ける。けれど午後から吹くかもしれないと、仲間たちと風待ちをすることにしました。
風待ちの時間って、不思議なもので会話が自然と生まれるんですよね。
- 「副長、グアム行ってきたんやな」
- 「副長、今日も撮影するんか」
- 「副長、最近は万博どう?」
そんな声が次々と飛んできて、今まで話しにくかった人とも言葉が交わせる。無理に笑わなくても、会話は広がっていくんだなと。自然体でいいんだと、その時ふと思えました。
やがて待ち望んでいた風が吹き出しました。
みんなが待ってましたとばかりに一斉に出廷。僕もその後を追いました。いままで小さく積み重ねてきた練習を試す時。沖へ向かって踏み出し、セイルを立てて体重を後ろに移す。思った以上にバランスが取れて、舵も自在。おもしろいぐらいに進むんですよね。
風はどんどん強くなり、ボードは加速。
何度もマストと一緒に前へ飛ばされて海に叩きつけられました。それでも体重を後ろにかけて姿勢を保つうちに、ついに念願のプレーニング。海面を切り裂く音、水しぶき、足裏に伝わる軽さ。
初めてのパワーとスピードの体感に舵がぶれてボードが暴れました。
念願のプレイニングで、喜びのあまり叫んでいました。
でも自然は甘くない。風速は10メートルを超え、波も大きくなっていく。周りには「ケガするからやめるわ」と撤収する人もいました。
けれど僕は「まだいける」と欲張って続行。そしてセイルが風にあおられ、顔面を直撃。流血して、さすがに心が折れました。痛みでしばらく動けず呼吸を整えている間に風に流されてビーチのほうへ。
風向きが沖へ向かっていたら、関空のほうへ流されるところでした。運がいいわ。
そこで撤収を決断。
痛みはありましたが、それでもプレーニングできたことが何よりの収穫。やっぱり「やってよかった」と思えたんですよね。挑戦したからこその手応えと、無理をすれば危険がすぐ隣にあるという教訓。その両方を持ち帰った一日でした。
風は気まぐれで、思うようには吹いてくれません。
けれど待った時間も、吹いた時間も、全部が自分の力になっていく。次はもっと冷静に、そしてもっと楽しんで海と向き合いたい。
そんな余韻を残した一日になりました。