息子の進路と向き合う僕の話——ローソンから関空へ、変わり続ける若さと親の葛藤
留学から日本に帰ってきた息子が、思いもよらぬ選択をした話
留学を終えて帰国した息子。
英語力もそこそこ身につけて、次はどうするのかと思っていた。僕としては地の利を活かして関空で働くのもいいと思う。もしくは万博特需があるので、海外からの来場も多い大阪万博で働くのも自然な流れだろうなと思っていた。だけど息子は僕の予想を、軽々と裏切ってきた。
彼が最初に選んだ仕事は、まさかの「パチンコ屋」。

は?なんでパチンコ?
うん、びっくりしましたよ。親としては、やっぱり少し拍子抜けしました。
それって英語必要ないじゃん。誰でも出来る仕事になんで就くの?



やってみたいんだよ
“やりたいことをやってみたい”——その純粋さを尊重する一方で
もちろん、やってみたいという気持ちは大切です。
体験価値としても意味がある。だけどパチンコはないだろと思いました。せっかく留学して英語というスキルを身につけてきたのに、英語を放置して誰でも応募が出来る仕事にエントリーするってどういう基準なのだろうと。
だから僕は彼にちゃんと意見しました。
- 英語力をつけたとになぜ活用しないの?
- 英語必須の職場はみんな英語を勉強してきている奴らがいる。
- 人は影響しあっているんだよ。
- 英語の次は何をしようかとみな考えている。
- そんな良い影響をもらえるところに身をおきなよ。
だけど彼は僕の意見を聞き入れず、目先の利益である時給に目を向けていました。彼は彼なりの物の見方があるようです。
だからこそ、僕は頭ごなしに否定せず彼の選択を見守る事にしました。



働くことは、お金を稼ぐだけじゃないんだけどなぁ
自分に良い影響を与える“場”としての価値もある。そういう意味で、もう少しもっと広い視野で選択をしてほしかったという思いも、やっぱりありました。
正面からぶつかるのではなく、支えるという教育
ただ、僕が納得したのは福利厚生。
社会保険に入れて、生活の安定が見込める。そこを見て「まぁそれでいいか」と落ち着いたわけです。
選ばせて、任せて、見守る——これが僕なりの教育方針です。
ローソン夜勤、そして“ママに許可をもらいな”と伝えた理由
そのパチンコ屋も3か月で辞めて、次に息子が選んだのはローソンの夜勤。
これもまた意外だったけれど、「可処分時間があるからアイデアを練る時間になる」という理由。夜のコンビニは人がこないので、服のデザインを考える事が出来るというものでした。



お前・・・英語は?
聞く耳もたないので、これも彼の選択を見守ります。
ただ未成年ということもあり、夜勤には親の承認が必要。僕にその書類を書いて欲しいときたので、ここはちゃんと言いました。パパはお前の親権をもっていない。ママはお前をパパに預けたけども、親権まではパパは預かった覚えはないので、「ママに許可をもらいな」と。
なぜ自分で承認せず、元妻にふったのか。
それは、冷えてしまった彼らの関係を、少しでもつなぎ直すきっかけにしたかったからなんですが・・・・。もうこれは書けば書くほど失望するので、事の顛末は伏せておきます。
わずか1ヶ月で辞めたローソン——不安とやるせなさ
しかし、またもやすぐ辞めた。
理由を聞けば、「可処分時間があった」とのこと。しかし「陳列作業をしていて、これが将来何の役に立つのか?」ということでした。



やっとそこに辿り着いたか・・・
息子がそこに気がつけたのは良かったのですが、見切りが早いというか、変わり身が早いというか……やってみるのはいいけれど、せめて1ヶ月じゃなく3ヶ月ぐらい続けてから判断してほしいと思ってしまうんです。
英語を活かした仕事にようやくたどり着く
その後、彼が口にしたのは「関空の免税店で働きたい」
ついに、僕がずっと言い続けていた“英語を活かす”という道に、ようやく自分から辿り着いたわけです。



「中国人ばかり来たらどうしよう」
と不安げに言っていましたが、その時はこう言ってやろうと思っています。



「中国語を勉強するいい機会じゃないか」
視野を広げていくには、ひとつの言語だけに固執するのではなく、複数の言語や文化に触れることが大切だと思うんです。
服を海外に売りたいという夢があるなら、なおさらです。
教育とは、言って・待って・気づかせる繰り返し
息子への教育をひと言で表せば、こうなります。
まずは親の考えを理論的に述べる
長期的な利益があることを伝える
だけど短期的な報酬に飛びつく息子
それでも息子の選択を尊重し、批難しないで受け入れる
やってみて本人が考えるのを待つ
疑問を持ち始めたとき、再び僕の考えを伝える
地味だけど、これが僕の辿りついた教育スタイルです。
離婚というどん底が教えてくれた“忍耐”
僕がこの姿勢を持てるようになったのは、やっぱり離婚という人生のどん底を経験したからだと思います。
あの時の苦しさ、孤独、後悔、すべてが今の僕を支えている。あのどん底でしか見えなかった景色があるし、そこでしか手に入らなかった「忍耐力」がある。
逆境を乗り越えた僕は、もう自分自身に負けるつもりはない。
これから息子が歩む未来へ
さて、息子がこれから関空の免税店で何を得て、何を感じてくるのか。
どんな出会いがあって、どんな挫折を味わって、何を自分の中に積み上げていくのか。
それが、ちょっと楽しみでもあるんですよね。
僕が言ったことじゃなくて、自分で感じ取ったことが、いつか彼の“核”になってくれれば、それでいいと思うんです。
そして僕はまた、その時を信じて静かに見守っていようと思います。